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マイケル・ムーアの世界侵略のススメの東京キネマのレビュー・感想・評価

2.5
まあ、いつものマイケル・ムーア節です。面白いですが、ちょっとフィルターをかけて見た方が良さそうです。お話としては、ヨーロッパの社会保障の上澄みを掬っているだけなんで(特に経済の話は一切ない)、こういう状況があったにしても、トータルで見ればまだアメリカの方がうまくいってるんじゃない?、と言いたくもなります。そもそも、他国の良い部分だけ拾い挙げて比較し、それでアメリカダメ論をやってる訳で、日本のアレと同じですよ。手法が古すぎです。

特に気になった点は二つ。
一つはドイツじゃナチに関しての教育を小学校からやっている。凄い。アメリカ人としてどうしたらアメリカ先住民や黒人に対しての罪を償えるのか、と。(原爆落としたのを忘れてるぞ!)まずね、それはかいかぶり過ぎですよ。戦後ドイツはポーランドにさえ大戦時の国家賠償をやってません。ヒトラーという人がやったことで、私たちとは関係がありません、が基本姿勢です。だから、ナチズムに騙された可哀想なドイツ人と客体化(これ日本語では、責任逃れと言いますが)した上で、謝罪しただけです。後ろを向いた瞬間、アッカンベーですよ。それに、今のアメリカ人が罪を償うんだとしたら、先祖に白人の血筋のある人間全てを母国に帰させなければならない訳で、どう考えてもできる訳がないでしょう。出来ないからこそ、ポリコレを一生懸命やって贖罪した気分になってるだけなんじゃないの。というより、解決不可能な責任論にして社会を混乱させたいだけでしょ。

それともう一つ、ポルトガルではこの15年間、ドラッグの使用で捕まった人は一人も居ない。ドラッグで罪を犯す人はたったの10%。残りの90%は犯罪と直接関係ない。そりゃ凄いね、アメリカと大違い。アメリカもそれを真似した方が良いかもね、と。こういうのもどうかと思いますよ。残りの10%が川俣軍司だったらどうすんのよ。母数が圧倒的に違う国なんだからさあ。それに、日本の朝日毎日と同じで凶悪犯罪者にはいつも優しいからね、ヨーロッパのメディアも。尚且つ、これが外国人だと報道さえしないし、どんどん凶悪犯罪が見えにくくなっている状況があるってのにさ。。。

だからね、結局、アメリカの問題は、アメリカが歴史的に積み重ねてきたシステムをメンテナンス(保守)しながらやってくしかないんですよ。それ以外に方法があるかも、と考えるのは自由だけどさ。それがマイケル・ムーアの限界なんだよね。
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