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20センチュリー・ウーマンのmatsuitterのレビュー・感想・評価

20センチュリー・ウーマン(2016年製作の映画)
3.3
母子家庭とその下宿人との特殊な関係を映した日常系雰囲気映画。プロットは弱いもののその会話の刹那的な魅力はエッモーショナルッッ!!!3人の女がウーマンリブ、パンク、ニューウェイブな時代の組み合わせで引き起こすマジカルな会話に完全に心を奪われる。超絶エモいフェミ&フェチ。突然のモノローグ、早回しとぼかし残像、シンセのBGMがこれは夢だと教えてくれた。一生忘れない傑作。

以下ネタバレ。今回は完全にポエムです。

正直言って話の大筋はスゲーつまんない映画だった。前半プロットが追えないぐらい変なシーンばかりで混乱して、こんなトリッキーなのに脚本賞ノミネート?!?と思っていると、退屈なシーンの合間、超面白い会話と行き当たりばったりに出会ってしまう。

何がどう良かったのかって、完全にキャラです。エルファニングとグレタカーウィグの絶妙な雰囲気に完全にノックアウトです。エルファニングがいきなり部屋に入ってきて、妊娠しただの、タバコの吸い方を教えてやるだの、男性のセックスの息遣いのここが良いだの勝手に話し出す。赤毛のグレタ・ガーウィグは狭い家なのに爆音で踊りだし、意味不明な写真を撮って、クラブに引っ張っていって、ミステリアスな男の仕草を教えてくれたり。そんなやりとり全部が完璧に「青春」すぎるんです!!

男性の私からすると母の余計なおせっかいはリアリティがありすぎて面倒くさいし(泣)、金髪女と赤毛女は気が狂っていて、 話をすればするほどなんでだろうどんどん大好きになっていく。気がついたらこの反則的な人間関係に完全に気持ちを持っていかれてしまった。微妙な母と仲良し美女が俺を育ててくれる。その中で、自分が理解できない世界の扉が一瞬だけ開く瞬間を体験する。ああこれは俺の人生だ。この退屈で閉塞した日常よ終わらないでくれ。そう思いました。これを恍惚と呼ばずして何と言おうか。

モノローグと、シンセ音のふわっとしたBGM、映像をぼかしたり早回しをしたりする手法をたまに挿入してくる。これが、ああこの時間は今じゃない、これは思い出なんだっていう感じでまたいいんだよね。。

何かのイベントがあるような非日常ではなく、日常の会話をそのまま切り取ったかのような唐突で荒っぽい脚本と、絶妙なキャラ設定、時代を象徴するキーワードと空気感。本当に楽しい瞬間は、日常に散りばめられた宝石なんだ。私はこの映画のことはずっと忘れない。

余談。

グレタカーウィグが、ネオンデーモンのジェナ・マローンに観えてしかたなかったんよね。似てるんよ。一緒にエルファニングも出てるし。

70年代リバイバルは革命的な時代背景が際立っていいよね。逆にもうすぐ90sリバイバル的テーマもどんどん映画でやってくれるだろうなと思うとその流れも楽しみ。

子供のころ、適当に観ていたTVアニメにかけがいのないような面白さがあることに急に気がついた瞬間を思い出して、日常系ってハマるときはほんと心底ハマるよねって思いました。
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