小松屋たから

ニューヨーク 眺めのいい部屋売りますの小松屋たからのレビュー・感想・評価

3.8
ある週末。
老夫婦が40年住んだブルックリンのアパートメントを手放そうとする。

さすがN.Y.が舞台というべきか、不動産の売買、ペットの病気、アーティストとしての生き様、夫婦の回顧、人種差別、格差、市全体を巻き込んだテロリストと疑わしき男の逃亡…と様々な要素が入り乱れる、まさに怒涛の三日間。しかし、映画としてはまったくそんなバタバタを感じさせない、上手く纏められた小粋な映画だった。

基本はコメディなのでもちろん過剰に描かれているのだろうが、N.Y.のしかも一般の不動産の販売があんなに分刻みで行われるとは。物件の内覧は投機目的の人間も多いからか、まさに戦争。

こんなスピード感で決めていいのかという躊躇いと、でも決めなきゃという切迫感がうまく相互作用しながら夫婦の感情を昂らせていく中で、二人の出会いから、結婚の際の壁、子供ができなかった苦悩、そして、今に至るそれぞれへのいたわりの想いが鮮やかに浮かび上がってくる。

随所で、ある女の子が妖精のように現れて夫の心を解きほぐしていくのだが、その塩梅も押し付けがましくなく、心地良い。

しかし、N.Y.の不動産販売代金、ペットの治療費の高さには驚愕。あまりお金儲けが得意そうではないこの夫婦がよく生活できるなと思うが、それは、長年住んできたがゆえだろうか。

モーガン・フリーマン、ダイアン・キートンの夫婦、素敵でした。