小松屋たから

最後にして最初の人類の小松屋たからのレビュー・感想・評価

最後にして最初の人類(2020年製作の映画)
3.2
若い頃、全然わかっていなくても、「これは面白い!」と言わないとなんかカッコ悪くて、背伸びして色んな現代美術を見ていた恥ずかしい過去を思い出させる作品。遥か未来の人類が、今を生きる我々に静かに語り掛けてくる。その背景に異世界感を漂わす近過去の戦争遺構、記念碑などの建造物を淡々と、しかし、嘗め回すように映していく。

この「近過去の遺物」というところがきっとポイントで、平時では、他の惑星、未来、もしくは、遥か過去を感じさせる奇妙な異物を、戦争や独裁という特殊状況に陥った人間はいかに科学が発達した時代においても違和感を持たないまま造ってしまう。それは実は異常な行動だと気づくべきなのだ。

今をどのように生きようとも、いずれ人類は滅びるだろう。それは自然の摂理であり、避けようはないことだ。しかし、皆が少しでも我にかえれば、その終末や破滅の在り方を変えることはできるのかもしれない。そんなことを伝えたいのだろうか。

一方で、この作品、裏を返せばそんな遥か先まで人類は姿かたちを変えながらも生き延びたのだという勝利宣言ともとれなくはない。であれば、戦争遺構は、その制作者の意図通り、勝利のモニュメントなのかもしれない。

多くを観る人に委ねた、映像よりも音楽と音声が主役のビジュアルアーツ。とてつもなく大きな全方位スクリーンか、逆に金沢の21世紀美術館など優れた現代建築物の中の、それも地下室のような閉鎖空間か、とにかく「普通ではない」状態で観るのが良いのかもしれない。

しかし、このスポメニックという旧ユーゴの建築物、数千から数万年後に発掘されたら、ナスカの地上絵やストーンヘンジ、モアイ、ピラミッドみたいに、誰がなんのために造ったのか、未来人たちは色々思索するのだろうなと考えれば、それはそれで、夢のある壮大な話ではある。そして、それらの過去の遺産がどのような状況で建造されたのか、その謎解きのヒントでもあるわけだ。

で、結局、自分は何もわかってないと思います 笑