小松屋たから

フリー・ガイの小松屋たからのレビュー・感想・評価

フリー・ガイ(2021年製作の映画)
4.3
いやー、楽しかったです!

主人公がサングラスをかける=自我が芽生える、というのは、アダムとイブの物語を反映しているのだろうか。海外の映画には、自分にはわからない、宗教的感性が自然に取り込まれていて、それにあとで気づいた時、色々な謎が解けるきっかけになったりするので、実は中々油断できない。

大量殺人、銀行強盗、銃乱射などのリアルな生活ではそう簡単にはできない犯罪行為を、ゲーム内でこれだけ多くの人が平然と「プレイ」しているというのは、実は、なんとも怖いことで、ゲームがそういった危険な願望の捌け口になってくれているのか、それとも、ゲームに触発されてリアルな犯罪の過激さが増しているのか、大いに議論があるところだろうけれども、この作品では、そういった「リアルと仮想空間の間の壁」に関する真剣な課題を考えさせられる間もなく、鑑賞直後は、ただただ、面白く、新しいものを観た、という気持ちになった。

後からゆっくり考えると、人間と仮想空間のAIの間に違いが無くなってきている、ということを示す、中々、恐ろしいテーマを孕んでいる作品。でも一方で、最後はリアルな人間どうしの恋の話に落とし込んだり、悪者役がサーバを物理的にぶっ壊す、というなんともアナログな方法で疑似世界を消滅しようとする姿を泥臭く描き出すなど、根底には「人間という存在」への信頼がある。

だから、ゲーム内での「モブキャラ」は、現実社会での自分のことであもる、ということに気づかされ、感情移入できてしまうのだろう。仮想空間の場面でも人間らしい感情を見せるところはすべてリアルな俳優の姿、ゲーム的な動きをするところはいかにもゲームキャラというように、映像が切り分けて構成されており、その塩梅が絶妙で、どのシーンもすべて自然に受け止められた。

うん、やっぱり、これは好きな作品。もっとヒットしてもいいのに。

ディズニーが配給となったことで可能になったという他の映画作品のオマージュや、アイテム使用は面白いが、ディズニー一強時代の到来を益々感じさせられ、ちょっと辟易はしたけれど。