新潟の映画野郎らりほう

無限の住人の新潟の映画野郎らりほうのレビュー・感想・評価

無限の住人(2017年製作の映画)
4.3
【夢幻回り廻るかざぐるま】


手房落ち、血反吐し、悶絶す-。
不死との触れ込みに相反する如く、主人公万次(木村拓哉)に執拗に纏わり憑く死の表象。

亡き妹の生き写し。小雨が水面に無数の波紋生む河原は霞がかり、幽玄帯びるさま彼岸の如し。そして かざぐるまの回転(無限運動)は、限り無く生と死を繰り返す永劫輪廻(サンサーラ)の暗示でもあるだろう。


絶息し横たわる町(杉崎花)の見開いた侭の右眼を、そっと撫で閉眼してやる万次。- 斯様に 閉眼が 死の意を持つ事は論を俟つまい。
その 死顕す閉眼を、同じく万次も右眼に宿している訳であり、その事が『死と無縁の不死(開眼)でありながら、強く死(閉眼)を意識させる』のである。

それらを鑑みれば、全ては夢幻彷徨う万次の心象だろうか-。
「今際の際」「走馬灯」「今際の回り灯籠」-それら抒情や隠喩を随所に感じさせながらも、然し三池は徹底してエンターテインに振り切る。

『めんどくせえ、俺は一体誰を斬ればいい』-複雑化した事の相関に万次が吐き出す不平は、抒情や主題、隠喩の類に気を取られ 作品を複雑化させる事を断固突っ撥ねた、ただ外連であろうとする三池自身の呟きでもあるだろう。

全てを得心した万次が不敵な笑み浮かべ言う『それでいいんだよ』-清々しさすら覚えるそのさまに、確信に満ちた三池自身が重なり身震いする。




《劇場観賞×2/観賞券当選×2》