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風櫃(フンクイ)の少年のkoyaのレビュー・感想・評価

風櫃(フンクイ)の少年(1983年製作の映画)
4.5
 この映画は1983年です。
日本はまだまだバブル景気に浮かれていた頃。
そういう時にこの映画は公開されなかったろうと思います。
今だからこそ、(私が観たのは映画祭ではありますが)開されて共感を得るのであろうと思います。

風櫃という台湾南部の島では、景気がいいとか、あまり関係ありません。一番近い都市は高雄で、さらに大都市、台北があります。

さて、この時代、私は何をしていたか?
学生から社会人になって、世の中浮かれていたけれど、仕事がきつくて泣いていた頃であります。
景気がいいときに忙しいのと景気が悪いときに忙しいのでは気分が違う、と後に言われた言葉でありますが、私は仕事ではつらい思いをしていたけれど、飲み会とかも連日でそれなりに青春を謳歌していたのだと思います。

 そしてもう老後を感じる、考える年になってみると、この映画は実に先を読んでいたのですね。
いつか来る不安。若くてもなんとなく感じる将来への不安。そんなものが描かれていました。

 若い時に観るのと今の年になってみるのでは多いに違うのですが、それは受取手の問題で映画は以前として映画としてあるわけです。
それを今、こうして観て、驚く訳ですね。こんなに「不安」に満ちた若者像だったと。

 主人公たちがたまたまもぐりこむ映画館では、ルキノ・ヴィスコンティ監督の『若者たち』が上映されている、と言う点だけでも
すごく「若者の不安」を描いているといいましょう。
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