磔刑

アントマン&ワスプの磔刑のレビュー・感想・評価

アントマン&ワスプ(2018年製作の映画)
1.5
「ピム&ワスプ」

今、見た直後なんだが全く内容が思い出せない。それぐらいインパクトが薄く、「これ、単作でやる必要あるか?」って内容だ。

他のヒーローと比べて地味で凡人的なのがアントマン/スコット・ラング(ポール・ラッド)の良いところなんだけど、続編でも凡人扱いしてどうすんだって話である。オリジンでは小規模ではあるがヒーローとして自立し、ピム博士(マイケル・ダグラス)やホープ(エヴァンジェリン・リリー)にその存在を認められたはずだ。が、今作は主役のはずのスコットは問題(主題)の蚊帳の外で、ピム博士やホープも「別にお前いらんのやで、改良型のスーツあるし。やっぱホープの方が有能やわ」って感じでスゲー扱い悪くて、観てて「これ、マジでヒーロー映画??」って思った。

確かにアベンジャーズの中ではイジられキャラポジションではあるが、それはアイアンマンやキャプテン・アメリカみたいな花形ヒーローと並べたらであって、ピム博士やホープみたいな脇役が主役面してイジっちゃダメなんだよ。『アントマン』においてはスコットがヒーローなんだから、然るべきところは立てて挙げないと誰が主人公か、何が主軸か分からないくなって物語が大変不安定になる。その構造ってヒーロー映画としては致命的だと思う。
そんな美味しいイジり、必要なイジりではない、三流芸人やド素人がやりがちな詰り、蔑みになってるのでスコットを見てても不憫な気持ちにしかならない。ヒーローなんだからもっと頼られ、必要とされて然るべきではないだろうか。

それに今作は見せ場(盛り上がり)が余りにも少ない。前作は設定の説明、スコットの成長に重きを置いてたのでバトルはラストのみの構成になっていだが、なぜ説明を省ける続編でここまで見せ場が無いのかかが理解できない。
対抗勢力も非力で地味なマフィア。動機、ビジュアル共に脆弱なゴースト(ハナ・ジョン・カーメン)。と、スコット達の目的と相反する組織や人物に魅力が足りない。そのため、スコットと対決しても全然活気溢れるビジュアルに発展しないので、マジのマジで記憶に残らない映像の連続になってしまっている。アントマンが地味な分ヴィランとその目的、戦い方なんかは視覚的に派手であるべきではないだろうか?

それに、あのカーチェイスがクライマックスってマジ?!あの程度の内容なら中盤での使用が良いところだろ。実際、多くのmarvel作品においてカーチェイスは中盤の盛り上がりとして使用されている。そんな中継ぎ的シーンを今更クライマックスに持ってくるってどうなん?しかもトレーラーで開示された情報以上のシーンも無く、既視感塗れで盛り上がりに欠ける。

加えてピンチを作り出す為に重要な装置が壊れてるってマジでなんなんだ?『ミッション・インポッシブル』のドバイをよじ登る回(語彙力皆無)でも似たような事やってたが、発想が幼稚過ぎてスゲー嫌いなんだが?装置の不備は自らの過失であって、それを葛藤として位置付けるのは無理がある。そんなん自己責任の範疇やん。
それに自らの装置が故障してたが為に嫁を死なせたピム博士が壊れた装置を「赤の他人やからええかー」って軽さで渡してるのも主題に重大な欠陥を生んでしまっている。そんなアホな行動しといて「嫁がー!嫁がー!!」とか言われてもアホかと。さっさとスコットの装置直したれや。アホタレ。

前作で登場した娘や泥棒一味も全然話に絡まず、そのくせ顔だけ出すからテンポを殺してる。特にマイケル・ペーニャの「はい!今からボケまーす!!」って感じがめちゃくちゃ滑ってるし、マジで勢い死ぬからやめろ!!しかも長いねん!!自白剤のシーンなんか丸々カットだろ普通。
縮小、巨大化の技術も何でもありになり過ぎなのもどうかと思う。スーツを着なくても小さくなれるし、巨大化、縮小した状態でヘルメットを脱いでも良いって、もうアントマンである必要性すら感じないんだが?優れた科学技術っていうか『ドラえもん』の秘密道具やん。つーかアレ“ガリバートンネル”そのものですやん。

しかも前作ほどアリも活躍せんし。益々アントマンの存在意義があやふやにしてしまっている。雑にカモメ(ウミネコ?)に食われたりして、前作でアリ一匹が死んだだけでドラマを盛り上げ、観客の感情を奮い立たせた演出力はいったいどこに置いてきたんだ?マジでアリをアリとして扱ったら意味ないんだが?アリも大事なメンバーの1人なんだが???使い捨ての駒じゃないねん。なんか勘違いしてねーか??????

それに一応アントマンってヒーローなんだから、せめて人(善良な市民)の為に行動してほしかった。ピム博士もホープもマフィアもゴースト(ヴィランはともかく…)も、どいつもこいつも自分の目的の為だけに好き勝手に行動してて全然応援出来んし、感情移入もできん。それに肩入れするアントマンを見ても「よくやったな!!」って気持ちにはなれんだろ。
前作は“娘のヒーロー”になるって動機と推進力によりスコットが物語の柱になって、周りのキャラがそれぞれのドラマによりテーマを補完していた。しかし、今作ではピム親子の問題を手伝わされてるだけの只の巻き込まれた系ヒーローで、スコット目線で見るとホントにつまらない。(ピムの嫁を救うのは良いにしても、それが主題ってどうなんだ?しかもスコットとには全く関係ない話で、関係を持たせる為にテレパシーさせるって、もう無理がその時点で出てる。その部分を除いてしまったら本当にスコットの必要性がないってのがマジでヤバイ。)
最後のFBIとのやりとりもスコットが出し抜いただけだカタルシス皆無(しかも何回もやるし、演出が重複し、凡庸)。せめて町や世界の為に抜け出してたのならFBIも仕方ないなーって感じで黙認してくれてドラマとしても丸く収まり、カタルシスも生まれるのに、ホントただ追いかけてくる装置で、劣化トム&ジェリーって感じである。

今作って『インフィニティ・ウォー』の続編へのバトンタッチ、アントマンが『インフィニティ・ウォー』に出なかった理由を開示するクロスオーバー的にも重要な役割もあったのだが、それすらも果たせてない。こんな内容なら今作を無しにして『インフィニティ・ウォー』に出してやった方がマシだった。

一作目の出来が良かっただけにホント落胆させられた。アレだね“一作目は凡作。二作目は駄作。”ってmarvel作品の不名誉なジンクスを地でいってるね。まぁ、結局marvelにしても他のレーベルにしても続編ではヒーローを金儲けの道具としてしか扱ってないのが顕著で、その為全てが作為的に見えて好きになれん。そろそろ続編である意味、続編を作る意味をマジメに考え直した方がいいよ。
アリかナシかで言うと断然ナシ。
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