せーじ

リメンバー・ミーのせーじのレビュー・感想・評価

リメンバー・ミー(2017年製作の映画)
4.2
「嫌いにならないでとは言わない、でも、忘れないでいて欲しいんだ」

シネマイクスピアリで鑑賞。
会場は春休みだからか、開演前は声をあげる子供たちもちらほらいたが、はじまると集中していた様子。

ぶっちゃけピクサー作品であるというだけで、5点満点中4点は予め保証されているようなものなのだけれど、このスタジオの作品群は、どれも4点をつけたそこから先がどうなのかが非常に重要だと思う。それが見たくて選んだ訳ですが...泣きました、良かったです。

まず何が良かったかというと、世界観の構築が隅々まで行き届いているということ。ピクサーだから当たり前だと言われればそれまでなのだが、リスペクトに基いた膨大な取材量と脚本のブラッシュアップがキチンとなされているのが一目瞭然。正直メキシコの人々を羨ましく思ってしまうし、いつか本格的に日本を舞台に、日本の文化を題材とした作品を作ってほしいと本気で思ってしまう。(ベイマックスは、微妙に違うからね…)
「死者の日」の説明についても、説明が説明的にならないように配慮された演出になっているのも流石だよなと思う。
とは言えストーリーは、キャラクターの配置がいつものディズニー映画のそれを踏襲しているし、確かに先読みしやすいオーソドックスなつくりではあるのだろうけれど、いやいや、この作品のストーリーは「予測可能回避不可能」なやつなんですってば。先読みした結果がわかるまでのプロセスの描きかたがすごく上手いので「うわぁ…そう埋めていくんだ…!」と思わずにはいられなかった。(なのでエンディングから先、エンドロールもぼやけてよく見えなかったです)

ただ、本作を観て「夢よりも家族の方が大事っておかしくないか?」とか「じゃあ家族に看取ってもらえない人間は仲間外れで不幸なままなのか?」と思う人もいるだろう。けれども自分は、冒頭に書いたミゲルのセリフや最終的な行動、それと穏やかに"二度目の死"を迎えた"あの彼"の姿で、それはそうではないということをもきちんと説明しているように思う。そのあたりの線引きとバランス感覚が巧みなのも、ちょっと詰めが甘いのかもしれないけれど、さすがはピクサーと言うべきところなのではないだろうか。

細かいところでは、手仕事やギターの運指などの「指を使った表現」にとてもこだわっているというのも伝わってきて、好感を持ちました。
強いて言えば、主人公の相棒のわんこの存在が、ちょっと中途半端だったかな…と思ったり。それに「死者の日」が11月なので、そのあたりの季節に公開されていたならば、同時上映のあの作品もあそこまで叩かれなかったのではないだろうかと思いました。
とはいえ、基本的には我々日本人の価値観とも通じる、万人におすすめできる傑作なのではないだろうか…と思います。
日本を舞台に日本文化を題材にした作品、作ってくれないかなぁ…
せーじ

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