優しいアロエ

ぼくのエリ 200歳の少女の優しいアロエのレビュー・感想・評価

ぼくのエリ 200歳の少女(2008年製作の映画)
4.0
ギレルモ・デル・トロが太鼓判を押すのも納得。『シェイプ・オブ・ウォーター』と合わせて心に留めたい、美しきグロマンス映画だった。
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原作・脚本は、「北欧のスティーヴン・キング」とも呼ばれているらしいヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト。10/11公開の『ボーダー 二つの世界』の原作・脚本も務める。

いじめられっ子で、妄想のなかでしか仕返しのできないオスカー。彼が変わるためには、エリのような特別な存在が必要だった。「やり返せばいいのよ」そんなエリの言葉をオスカーは信じて疑わない。寡黙で内向的なオスカーだが、エリへの想いは見てとれる。

本作の原題・英題は「正しきものを受け入れよ」という意味。邦題よりも幾分素敵なこのタイトルは、オスカーが自分の家にエリを招き入れるシーンと結びつく。

「正しきものを受け入れよ」とはすなわち、エリの外見ではなく中身に目を向けよということ。美しい少女の見た目に惹かれたオスカーが、その愛からエリの本当の姿を受け入れ、理解しようとする。

いじめられっ子のオスカーと社会で受け入れられることのないエリ。2人の社会的弱者は他者の侵害を許さぬ愛を最後に勝ち取った。この点は『シェイプ・オブ・ウォーター』とも重なる。社会的に見えて、実は非常にパーソナルな物語だ。

ただ、そこに至るには、悲惨な出来事を乗り越えなければならないのだと本作は訴えかけている。痛めつけられ、逆に痛みを相手に知らしめ、ようやく2人はそこから逃れることができたのだ。

ゆえに過激なシーンも多い本作だが、『パンズ・ラビリンス』や『シェイプ・オブ・ウォーター』同様、撮影がすごく美しいので、チープな感じも下品な感じも一切ない。本作の撮影は、『インターステラー』『アド・アストラ』のホイテ・ヴァン・ホイテマ。宇宙を撮らせたら間違いないカナダの俊英が、本作では長回しの美しさを体感させてくれた。
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