マヒロ

ビースト・オブ・ノー・ネーションのマヒロのレビュー・感想・評価

4.0
アフリカのとある国で内戦が勃発し、少年アグーは家族と離れ離れになってしまう。反乱軍の家族だとして追われるアグーは、逃げ込んだ先のジャングルで武装した集団と出会い、少年兵として活動することになる……というお話。

『007』の新作の監督に抜擢されたキャリー・フクナガ監督作品。図らずとも暴力の渦に巻き込まれてしまう少年を描いておりなんとなく『シティ・オブ・ゴッド』を思い起こさせられるが、あちらに比べて全編気怠い絶望感に覆われているかのようで、若くして人生どん詰まりになってしまったアグーの様子がなんともいたたまれない。
なんせアグーはまだ小学校低学年くらいのまだまだ人生始まったばかりの少年で、そんな彼が普通の人が一生かかっても遭遇しきれないくらいの大量の「死」と向き合うことになるというのが恐ろしい。冒頭描かれる家族団欒や友達と遊ぶ場面では年頃の元気な子だった彼が、徐々に感情を失い静かに狂っていく様もまた怖くて、それを完璧に演じきっているエイブラハム・アッター君が素晴らしい。ヴェネツィア映画祭で彼の演技に賞が贈られたようだが、それも納得。

凄惨な死や殺しの場面も出てくるが、戦争としては全体的に割と抑えめかなという感じもあり。アグーの心象をナレーションで語りすぎかなというところもあり、エイブラハム君の演技も良かったしそこは映像で見せて欲しかったかなぁ。

(2020.36)
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