世界的に悪名高いメキシコ闇社会の麻薬カルテル。本作品は「殺される前に殺るしかない」と立ち上がった住民たちが、気づけばメキシコ政府の仲介で麻薬カルテルと持ちつ持たれつの関係にさせられるという、あまりに理不尽で不条理な現実を浮き彫りにしたドキュメンタリー作品です。非常に重たい内容です。
貧困を背景に生まれた麻薬カルテルは、貧困をそのものを撲滅しないと、いくら銃弾を浴びせても何度でも蘇生するー。本作品から伝わるのは、こんなメッセージです。「俺だってこんなことはしたくない。マトモ本な仕事に就きたいよ。そして世界を旅したいんだ」と語るカルテルメンバーの言葉が印象的でした。
同時に本作品は、米国南部の保守系住民が麻薬カルテルの越境進出を受け、メキシコ人へのレイシズムを背景に自警団を結成する様子も収録しています。この保守系住民たちは、貧困層の白人です。貧困から来る社会への苛立ちと不満が、醜悪なレイシズムにいとも簡単に結び付くー。そんなメカニズムを読み取ることができます。
映像には、本物の死体が映っています。見せしめで処刑された住民の首吊り死体や、地べたに並ぶ生首に言葉を失います。観る方はご注意願います。理不尽な最期を遂げた全ての犠牲者の皆様、どうか安らかにお眠りになってください。