ロックウェルアイズ

シティ・オブ・ゴッドのロックウェルアイズのレビュー・感想・評価

シティ・オブ・ゴッド(2002年製作の映画)
4.9
ブラジル・リオデジャネイロ郊外。
「神の街」と呼ばれる貧民街では日々強盗や殺人が横行し、金と薬が街を支配していた。
そんな天国のような地獄を生き抜いたブスカペの少年時代を描く実話に基づいた物語。

とにかく衝撃的。
ラストの高揚感のような緊迫感のような、はたまた悲壮感のような衝撃は特に鳥肌モノ。
観るまではジャケットからかなり重い話だと予想していたが、実際には驚くほど陽気な話だった。
まずファーストカットから引き込まれる。
逃げ惑う鶏、追いかけるギャング、ギャングたちと警察に挟まれた鶏とブスカペ。
そしてこのシーンがそのままクライマックスへと繋がる。
このシーンでもそうだが、全体的にカメラワークが挑戦的で面白い。
この映画がただのギャング映画でもただのスラム映画でもただの社会派映画でもないのは、こういったカメラワークや独特の音楽といった個性的な演出が光っていることが大きいと思う。
敢えてジャンル分けをするのであれば青春映画だろう。
生まれた国、そして環境が違っただけ。
彼らは我々と何も変わらない若者であるし、銃やドラッグは間違いなく彼らの青春だ。
映画を観ていると正義と悪の境界線が大きく揺らぐことがよくあるが、この映画ではそれが異常だった。
正義も悪もどうでも良い。
勿論、暴力や殺人、レイプと言った蛮行は許されるべきものではないが、登場人物たち誰ひとりとして憎めないのが印象的だった。
当人たちは愛憎渦巻く覇権争いをしているが、ここまで一人ひとりのキャラクターの内面を見させられるとどうも嫌いになれない。
ただただ良いやつのベネは勿論のこと、あんなに残虐で極悪非道なリトル・ゼでさえも、可愛い一面や仲間想いなところが少し見え隠れしていて人間味に溢れていて良かった。
画面からは彼らの生への衝動が滲み出ている。
こんなにも登場人物たちが尊いと思える映画だとは全く予想していなかった。

最初から最後まで完璧な繋がり。
完全に映画に呑まれて2時間あっという間だった。
神の街で繰り広げられる事件は壮大なようでとても狭い閉鎖的なもの。
次々と代わるこの街の王と取り巻き。
下克上を狙う者、足を洗おうとする者、復讐を企む者。
治安の良し悪しというのは、治める者がどれだけ機能しているかで決まるのだと。
生活の質、人間の質、それらをしっかり救いきれるのか。
警察こそが1番の悪であった。

映画だからこそ得られる感動をどうもありがとう!
面白かった!
(どうやら続編あるみたい)