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笛を吹く男の消費者のレビュー・感想・評価

笛を吹く男(2015年製作の映画)
4.1
・あらすじ
戦争で脚に障害を負う男性、ウリョンは肺病を患う息子、ヨンナムに治療を受けさせるべく親子で長旅をしていた
そうして行き着いたのはとある山村
当初、村人達は2人に訝しげな目線を向けていたが村長に迎え入れられ泊めてもらう事に
やがてウリョンは村民達の悩みの種である凶暴なネズミの大群を封じ込めたり村の手伝いをしていく内に信頼を勝ち取っていく
彼自身も終戦を彼らに教えるな、と村長から口止めを受けるなど不審な点はありつつも村に馴染んでいった
しかし互いに恋心を抱く村の巫女、ミスクや精力剤を作ってやった縁から兄貴と慕ってくれる様になった村の子供、チョルスの父などにソウルへの同行を誘った事から状況は一変する
戦争は続いているという虚言やミスクに巫女を演じさせたりという行動を取ってきた村長にしてみれば都合が悪かった為だ
それをきっかけに村長と彼の息子でウリョンに向けられる村人達の信頼に嫉妬心を抱いていたナムスはウリョンをアカのスパイだと吹き込み追放しようと画策する
それが悲劇の始まりとなる事も知らずに…
という「ハーメルンの笛吹き男」をモチーフに製作された村ホラー作品

・感想
童話を元としているだけあって昔話らしい寓話的なストーリーでありながら韓国映画らしく後半からの展開はただただ胸糞悪くなっていて後味の悪さが良かった
笛を得意とするウリョンが何を率いていくのか、と思いながら観ていたらそれが凶暴化し人に襲い掛かるネズミの大群だったのも面白い展開
動物を伴う脅威、という点ではヒッチコックの名作「鳥」を思わせる様な感じ?(まだそちらを観ていないけど…w)
癩病を患う人々を村に置いて避難し、終戦と共に都合良く戻ってきた村長を筆頭とした村人達、という業の深い過去もドロドロしてて良かった
互いに思い合っていたはずのミスクも命惜しさに裏切る展開も辛い…
昔の村社会の闇が詰め込まれた世界観は日本にも通ずる物があって理解もしやすかった
最も印象的だったのは凶暴化したネズミ達を使い魔の様に差し向け村の大人達を死に至らせた後にウリョンに嫌悪感や疑念を向けていた訳ではない子供達まで笛の音に導かれネズミを封じていた小屋に閉じ込められてしまうラストとナムスが嫉妬心からウリョンの作ったブランコのロープを切ったのが村長の死の原因となる因果応報の描写かな
ホラーとして観ると怖さには欠けるけど話の暗さとそれを支える原始的な山村の空気感が魅力的だった
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