くろみまりこ

SCOOP!のくろみまりこのレビュー・感想・評価

SCOOP!(2016年製作の映画)
1.5
(原作映画は未鑑賞です)

大根監督の前作『バクマン』が昨年のマイベスト邦画だったので凄く期待していたのですが、本当に酷い出来で心底がっかりしました。

登場人物すべての思考、発言、行動がもれなく破綻しており、何を考え何故そうしてどのように感じたのかがまったくもって意味不明。人物同士の関係性がわかるようなエピソードも小出し小出しでヘタクソに散りばめられているため、最後まで人物相関がまるで整理できない。

「なんでそうなったの!?」
「なにが起こってるの!?」
「どうしてこうなった...(絶望)」
の脳内突っ込みオンパレード。もう本当に意味がわからない。
週刊誌記者(カメラマン)の実態はよく知らないが、日本ではありえないレベルのカーチェイスやカーチェイス中の車輌同士のアツい(物理)バトル、記事のためなら法を犯し、道端で死んでいる人を見てもとりあえず放置するなど、よく知らない人間から見ても
「は?いやいやこんなことあるわけないじゃん!」
な出来事の連続。もしかしたら多少似たようなことは実際にもあったのかもしれないが、それにしてもここまで非現実的なものを見せられてもこちらとしては頭が追いつかない。少なくとも取材の実態の破天荒さにもっと現実的な説得力を持たせる必要はあったはず。
観客を混乱の渦へ巻きこみながらもストーリーはとんとん拍子に進み、突如登場したなにかよくわからない事件になぜかメチャ熱く燃える二階堂ふみが、コント級にガバガバ警備すぎるマヌケ警察の目をかいくぐりシャッターを切る、、、もうこのあたりで考えることをやめたが、そのあと繰り出される意味不明なほど長いラブシーンでとうとう目をあけて見るのをやめた。

"カメラが似合う男"というのが主演福山雅治である理由のひとつなのだと思うが、正直なところキャスティングミスだと思う。はじめから終わりまで彼が、ドブネズミカメラマンを演じるただの福山雅治というだけにしか見えない。これならカメラの扱いが不得手でももっとスクリーン映えするような役者で見たかった。
彼の口からマシンガンのように放たれる下ネタは何一つ面白いものがなくただただ滑稽。まるで下ネタが多ければドブネズミ人間になれるかのようなキャラクター設定には閉口する。

前作『バクマン』は、夢に向かって一直線に走る主人公二人がとても魅力的にうつった。挫折と葛藤を乗り越えだんだんと成長する姿や目標達成に向けてステップを踏んでいく様子が少しの無駄もなく描かれており、努力した先に見えた主人公の達成感は観ていてとても気持ちの良いものだった。
今作も"自分の腕"を武器に奮闘する主人公二人組の話であるのに、なにが目標でどう頑張ってどのようになりたいかが不明瞭すぎるためにいったい何を応援すればよいのかすらまったくわからない。販売部数、記事の質、二人の仲の良さや周囲からの評価、それらは話が進むごとに右肩上がりとなってゆくが、それぞれの要素の関連性が薄いため、主人公たちが奮闘した結果どこからどこまで成果が出たのかもわからず、観ている側からすれば達成感もないし、ゆえに特に感情移入もできない。
『バクマン』の時に素晴らしかったものが、今作ではことごとくダメになっていたのが非常に悲しかった。

ラストカットからエンドロール後にかけてのタイムスリップにはお手上げ。もうこれ都城静でなくただの福山雅治を撮りたいだけだろとしか思えないサービスシーン。
長くなるので割愛するが、そもそもロバート=キャパに関した一連の流れは彼への冒涜だ。死人を撮ればキャパなのか。そして下ネタを言えばドブネズミなのか。全てが安易でガタガタな作品。
本当に、どうしてこうなった。

リリーフランキーと、編集部のスタッフ達の演技は良かった。
福山雅治さんのファンだけは大満足できるでしょう。