くろみまりこ

少女のくろみまりこのレビュー・感想・評価

少女(2016年製作の映画)
3.0
(映画鑑賞後に原作読了)

悪くない映画だと思うが、脚本が少々力不足だなぁと感じた惜しい作品。

予告からは、心に闇を抱えた少女二人の閉塞的な世界を描いたものと受け止ったが、どちらかといえばひと夏の友情を描いた青春ドラマといった感じ。
原作小説でもその点は変わらないが、複雑に絡んだ因果関係が冒頭と結末に置いた"遺書"により全て収束し、物語の裏のテーマにハッとさせられるミステリー作品であったのに対し、映画版では比較的そういった後味の悪さはオマケ程度に抑えられている。

おそらくこれは監督の意図なのだと思うが、であるならば"遺書"のシーンは排除し、もっと『ヨルの綱渡り』を重点に物語が進む青春映画に振り切ったかたちにしてもよかったのではないかと思う。
また「人が死ぬところを見てみたい」という台詞も、映画化による人間関係やエピソードの排除によりあまり意味をなさないものとなっているため不要だと感じた。

主人公は劇中「死とは現象だ」と語っていたが、この作品に触れて思ったのは「死は因果である」ということ。自殺、事故、病気、様々な死のかたちがあるが、今自分がこうして生きているのも全てタイミングと因果関係によるものでしかないことに改めて気付かされる。今日5分早めに外出していたらどこかで死んでいたかもしれない。もしかしたら自分が関わった何かが巡って誰かの死に繋がっているかもしれない。

死も生も、なにも確かなものはなく不安定なものでしかない。我々の人生はまさに"夜の綱渡り"なのだろう。
そんな中でも心の支えである"橋"の存在。ラストである人物が死を選択する舞台が橋だということが非常に皮肉めいていた。

役者陣だが、本田翼がとてもよかった。
特別上手いというわけでもないのだが、そつなく普通に演技をこなす役者とは一線を画す魅力を感じるし、映画のスクリーンに映える素晴らしい女優さんだと思う。

音づくりについてはあまり良いとは思えなかった。BGMのブツ切りショック演出は過剰だし、特に終盤の丘の上のシーンの録音が酷かった。あれはスタジオでアフレコしたんだろうか?風が吹く中での開けた空間や二人の距離をまるで感じなかった。
いくつかの映画からイメージを得たと思えるカットは、効果的に使われていると思う。

平日昼間の貸切鑑賞でした。
主題歌担当のGLIM SPANKYはとても良いですね!最近いろいろな映画で名前を見ますが楽曲が非常に好みなのでこれからも注目したいです。