磔刑

ジョン・ウィック:チャプター2の磔刑のレビュー・感想・評価

2.5
「そのAIM力チート級」

アクションシーンは視覚的レパートリーが多彩なのもあって、かなり楽しめる。特に『燃えよドラゴン』を彷彿とさせる鏡張りの部屋でのアクション、ローマでの黒人との肉弾戦、ニューヨークでのボスラッシュなどが見応えがある。
戦闘シーンで披露されるジョン・ウィック(キアヌ・リーブス)の人外じみた狙撃能力は伝説の殺し屋としての説得力をアクションで体現してる。とはいえ外さなさ過ぎて逆に笑えるレベルである。ここまで銃撃戦に独自性を持って演出できているのは『リベリオン』のガン=カタ以来ではないだろうか。是非ジョン・ウィックの殺陣にも固有名詞をつけてあげたい所だ。

上記に記した通りアクションシーンは大満足なのだが、それ以外のドラマパートが何とも貧弱で折角のアクションシーンにカタルシスが生まれ難くなっている。ジョンは必要以上に無口で感情や思考が読み難く、単純なストーリーすらわかり辛い。ジョンやそれ以外の人物も揃いに揃って口を開けばポエムのようなセリフしか言わず、これは逆に感情移入させる気がないとすら思える。
美しい景観やセットの造形美はアクションに花を添えており、作品の質の向上に大きく貢献している。アクションと景観の美しさが特筆して融合していると感じる夜のローマ、電光掲示板、ライブ会場などはダニエル・クレイグ版007シリーズに強い影響を受けているように思える。しかし、その主役を引き立てる為の背景美やアクションの華々しさに反し、キアヌ・リーブス以外のキャストのスター性の無さが足を引っ張ってる印象がある。せめてカモッラやコンチネンタルの面々、ジョンのライバルあたりはキアヌと対等のネームバリューのある役者、或いは生きのいい若手なりをキャスティングした方がもっと見映えが良くなったように思える。

前作の率直な感想はB級映画。それを無理矢理続編にした感は否めない。ストーリーは薄ーい復讐劇でジョンも寡黙でスマートな男かと思えばただの復讐馬鹿。最後に上手くたち振る舞えば猪突猛進のアクションとは別のクレバーな格好良さを提示出来たものの、結局はスタートラインよりも状況が悪化して終わっただけでしかない。まぁ、その続編を作り易いように風呂敷だけ広げて無責任にぶん投げた美意識の低い終わり方は映画よりもアメドラみたいな馬鹿馬鹿しさだ。何よりイキり狂った英字の字幕が最高にダサい。
アクションシーンの満足感が高いだけに他の変なこだわりが原因でバランスが悪くなってるのが大変残念な一作である。
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