偽名祐司

イップ・マン 継承の偽名祐司のレビュー・感想・評価

イップ・マン 継承(2015年製作の映画)
4.2
毎度おなじみ木人椿の響きで始まるイップマンの生涯エピソードの一部を描く第3弾。
リアルボクシングヘビー級王者であるマイク・タイソン参戦!
今作は一気に愛の話に。
次の相手は同門よ!格闘アクション映画として傑作です。

話はアプリ参照で。
1959年。すっかり有名となり香港で妻ウィンシンと次男チンと3人で暮らすイップマン。彼はチンの同級生の父親チョン・ティンチと出会う。彼も又詠春拳を修めていた。小学校の土地を狙うアメリカ人。貧困にあえぎ正統詠春拳の座を求めるチョン。様々な理不尽と戦ってきたイップマンに最大の敵が現れる。

これまでの作品は家族のエピソードや拳法でどうにもならない事に左右されるエピソードを入れながら様々な戦闘を描き、最終的にはもっとも盛り上がる理不尽な状況下で異種格闘技戦を行うという流れだったんですが。
今回はそれを一気にひっくり返してます。異種格闘技戦闘を中盤に持ってきて家族のエピソードをど真ん中に。素晴らしく感情に訴える作品となりました。ぶっちゃけ超エモい。

中盤に入る異種格闘技戦、その戦闘二つとも出来が素晴らしい。
まずは狭いエレベータ内で始まるVSムエタイ。
妻ウィンシンを守りながら戦い、映像的には初めて妻の目の前で戦うエピソード。演出が素晴らしく、一瞬でエレベータ外に吹き飛ばし扉を静かに閉める格好よさ。階段を下りながらの長回しの映像も良いですね。
静かにエレベータに乗り込み始まり降りる頃には終わってる美しさ。

そして満を持して登場するマイク・タイソンとの3分間VSボクシング一本勝負。
ピーカブー使いステップ踏みながら突っ込むタイソンの強さや対応力の素晴らしさ、正にヘビー級の一撃の強さに対して詠春拳の手数の強さ。スピードVSパワーの解り易い戦いが非常に観てて面白いです。
ここでも入る三戦の構えから入るオリジナルしゃがみ構えの美しさたるや。やってみれば解りますがアレ凄まじく体幹が必要です。演じるドニー・イェンも凄いです。引き分けを煮え切らない結果と観るかタイソンに対する敬意を持った結末とするかは人次第ですが個人的には後者って事で。

一方今作で一気に溢れ出る家族っていうかもうきっぱりウィンシンさんのエピソードが切ない。
1作目、2作目観てれば解るのですが、基本的にイップマンとウィンシンってあまり上手くいってた夫婦ではないのですよね。暴力が好きではないので格闘技バカのイップマンをあまり良く思ってはおらず。とはいえ人格者ではあるし良い人で頼りになる人なので。という感じに見えていたのですが。
イップマンも正直いつも弟子の事や、格闘関係の人々を中心に考えて家族を割とほっといた感じもあったので。そんな中炸裂する今回の一番の拳法ではどうにもならない理不尽にイップマンが奔走し思いやる姿が心を打ちます。

中でも「木人椿を打つ音を聞かせて」と請われてイップマンが夕焼けの中静かに表情を隠し木人椿を打つ姿。ゆっくりと響き、今まで映画を観てきた人なら聞くだけで伝わる言葉の無いイップマンの感情。3作全てにおいて一番の名シーンだと思います。涙しか出ません。

同門であるチョン・ティンチ演じるマックス・チャンも素晴らしい。
言うまでもなくイケメンで動きのキレが素晴らしく、息子思いの父親と良く解る。正にイップマンの光に対する影。そりゃスピンオフするわ。

同門対決で六點半棍から八斬刀→詠春拳へと切り替わっていく一連のシーンは格闘ファンには最高の映像です。それでいて締めにワンインチを持ってくるという流れ。殺陣として完璧すぎます。

序盤の小学校の話なんて後半忘れてしまう程に家族のエピソードや戦闘シーンが素晴らしい、格闘アクション映画好きなら間違いない傑作。4の公開が待ち遠しいですね。
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