るるびっち

ダンガル きっと、つよくなるのるるびっちのレビュー・感想・評価

4.3
バーフバリに続いて観終わった後、「ダンガル、ダンガル」と連呼してしまう。バーフバリ程中毒性は高くないが、心に刻まれる作品。
レスリングのテレビ中継に合わせて勝負を挑んできた男を倒す父。中継の実況とシンクロしている辺りから面白く、観客を引き込むテクニックに長けている。

男の子をボコボコにしたせいで、レスリング狂の父親に人生をボコボコにされる可哀そうな姉妹。可愛いのにハードなトレーニングの日々。
強くなる為に娘の髪を切ったり走りやすいように短パンをはかせたり、村の男たちに笑われて姉妹は辛い日々を過ごすが、実はここには二重性がある。
男尊女卑で女性を家の奥に潜ませるインド文化では、短髪・短パンの彼女たちは一見奇異だが、その姿形は日本を含め欧米では普通だし、皮肉にも村で一番進んだ女性の姿になっているのだ。つまりガンコ親父の横暴と思えるものが、結果的に女性解放につながっていく、そのことを視覚的に伝えている。

やがて強くなった姉は、父と自立との間で葛藤に苦しむ。
一旦は強い父の指導に従うが、それだけでは彼女は父の操り人形になってしまう。
本作では最大のピンチを自らの力で考え、道を切り開くことをキチンと描いている。
封建的で横暴な父親の身勝手な夢を娘に押し付けている話、と誤解されがちだが違う。
人生を独りで切り開く力を描いている。
幾ら父の教えがあろうと、マットの上では独りで戦うしかない。それを乗り越えてこそ、真の強さであることを伝えているのだ。

そして親子の闘いの裏に、インドでの女性への抑圧と解放を訴えている。
父親が言う「女子を下と見なす、すべての人に対しての闘い」である。
女性だけではなく、差別・文化を超えて全ての人がその人なりの現状の不当に直面しているはずだ、それが人生だ。
その不当を自分だけの力でどう乗り越えるかが、クライマックスに描かれているのだ。そこを見て欲しい。
強くなるのは肉体ではない心なのだ。
「ダンガル きっとつよくなる」
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