ゼロ

日本で一番悪い奴らのゼロのレビュー・感想・評価

日本で一番悪い奴ら(2016年製作の映画)
4.0
警察内部の不祥事を描く犯罪ドラマです。

原作は稲葉圭昭さんによる『恥さらし 北海道警 悪徳刑事の告白』。稲葉事件をモチーフに、現役警察官による覚せい剤取引や拳銃売買、そして背景にある警察の組織的な裏金作りや不祥事、それに翻弄され没落していく道警刑事を描いた作品です。表題にもなっている通り『日本で一番悪い奴』ではなく、『日本で一番悪い奴ら』というのがポイントです。

物語としては、諸星要一(綾野剛さん)は、大学時代に鍛えた柔道の腕前を買われて北海道警の刑事となった。真っすぐな性格であった諸星は、先輩刑事の村井(ピエール瀧さん)から、「刑事は点数、点数稼ぐには裏社会に飛び込み『S』(スパイ)を作れ」と教えられ、暴力団と密接な関係を持ちながら、上司からの難題を次々と解決していく。やがて、裏社会のスパイとともに悪事に手を染めていく…というもの。

テーマは道警の闇を描いていますが、映画としてはコメディータッチです。主演の綾野剛がふざけている感じもあり、観ていて面白い。先輩の村井定夫役をやったピエール瀧さんがいい味を出しています。

諸星は点数を稼ぐために警察から裏社会の人間へとなっていきます。点数を稼ぐために、知り合いから拳銃を、麻薬を、密輸をします。当然のことながら諸星単体でできることではありません。道警全体が見て見ぬふりをして成果を作り上げていきます。映画としても終盤では、諸星をトカゲのしっぽみたいに切られてしまいます。全てを個人の問題として解決しようとしていますが、諸星に関わった人間は処分されることなく、道警で働いています。

事実は小説より奇なりとは言いますが、この作品は日本における闇、警察における暗部を描いています。怖い作品ではあるのですが、マスコミが騒ぎだてることなく、風化されていくのでしょうか。

警鐘を鳴らすという意味でも、世の中で出た意味があった作品だと感じます。
ゼロ

ゼロ