青

君の名は。の青のネタバレレビュー・内容・結末

君の名は。(2016年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

『言の葉の庭』が気持ち悪かったので、新海誠を批判してやる〜というノリで観たら、結構良くてびっくりした。過去に観賞した時は超微妙だと思ったのに。
(追記: って思ってたんだけど、鑑賞から時が経つにつれ、夢から覚めるようにどんどん疑問点も浮かんできた。優秀なプレゼンを前に拍手喝采だったんだけど、翌日資料を見返したらあれ?と思う現象のよう。前回見た時も同様の経過を辿って、2.5点の評価に行き着いた気がする。)

【過去のレビュー(2.5点)】
プレゼンはとっても上手。でもストーリーや人物の心境を考えると、あれ?となる。
数百人が死んだ災害が無かったことになって、運命のお姉さんと結ばれて……、そんなハッピーエンドあり??
祠の謎回想シーンに登場する赤い紐は、臍の緒の隠喩か?とか考察してみたけど、全然そんなことはなかったってばよ!

【2022年9月11日観賞】
テンポが良くてどんどん引き込まれる。
謎が謎を呼ぶ展開とか、現実世界より瑞々しくてキラキラしている都会世界とか。

大災害の元凶や禍々しい自然の脅威を、思わず見とれてしまうくらい美しく感じることが私にはある(不謹慎だけど抗えない)。この映画の彗星の描き方はそれをやってのけていると思うので、アニメの表現としては満足かな。畏怖と美しさと禍々しさの境界を行ったり来たりする感じ。
おそらく、以前鑑賞した時の私は、そういう禍々しい災害を美術面でも丁寧に描いておきながら最終的にハッピーエンドに至る展開の都合の良さ・腑に落ちなさが許せなかったのだと思う。
その許せなさは、正直、今回も変わらない。でもまぁ、かつて程低評価にしなくてもいいかもと思えた。

組紐と時間を掛け合わせる発想は美しいなぁと思う。元いた世界はどうなる?というパラドックスが生じるので、無理があるけど。
瀧くんの「破壊された街にどうしようもなく惹かれるのは何故だ?」という台詞は、破壊される経験をしたことない人物が吐く言葉としては不適切だと思う。もちろん、三葉をずっと探していたからだという回答はできるし、上で書いたようにどうしようもなく惹かれてしまう畏怖の対象はあると思うのだが、災害をテーマに組み入れるなら登場人物の発言の意味をよく考えろと思う。
それに、大きな代償無しに皆を生還させることができました!なんて都合の良すぎる展開を提示されると、その後の代償として日本が沈没でもするのでは?と思えてしまう。神社絡みのお話だし。日本の神様って、鎮めなければ荒ぶるなり祟るなりするので。『バタフライ・エフェクト』のような、ある可能性を成り立たせるためには、現にある何かを諦めなければならない展開の方が私は好きだ。
辛いことは全て消せたら楽だけど、そうじゃないから現実は豊かなのであって、現実を模したものの豊かでない映像作品は出来が悪いと思う。高山ラーメン屋の店主が抱えていた痛みはどうなったの?とか、犠牲者名簿を編集した無数の人々の悲しみはどこへいったの?と疑問を持たざるを得ない。
また、同級生が三葉に協力して変電所爆破作戦を決行してくれる覚悟もよく分からん。一言でまとめるなら、同級生の一方は愛読書がムーであるようなお花畑で、もう一方は主体のない金魚の糞状態、つまり二人とも馬鹿だから決行できたってことになると思う。やっぱり説得力はない。

あの世の境を子どもである四葉が無邪気に簡単に飛び越えられる表現はちょっとぞぞぞっとした。
あと、よく分からんパンチラとか、胸揺れ表現は要らない。
「ちゃんと幸せになりなさいよ」という台詞と結婚指輪、からの結ばれるエンドは、恋愛(性愛)至上主義だなぁーと思う。
三葉の手のひらに書かれた文字が「すきだ」と知ったときには、正直馬鹿じゃねぇの?と感じた。名前書くってゆうてたやん。失笑。
青