カツマ

太陽のめざめのカツマのレビュー・感想・評価

太陽のめざめ(2015年製作の映画)
3.9
小さい子供にとっては親が全て。だが、親が親として機能しなくなってしまったら、子供だって壊れてしまう。自己の制御の仕方を知らぬまま、思春期を迎えた少年が少しずつだが『人生の計画』という名の大人になるための教科書のページを開くまでの物語。決してドラマチックではない。まるでドキュメンタリーを見ているかのようだ。人間はそう簡単には変われないが、きっと変化の時はやってくる。

6歳の少年マロニーは母親の育児放棄により一度は判事フローランスの世話になっていた。それから10年後再び判事の前に現れたマロニーは窃盗や無免許運転を繰り返す非行少年となっていた。判事の温情もあり、少年院ではなく更生施設送りになったマロニーは教育係のヤンの辛抱強い支えによって徐々に穏やかな一面を取り戻していったかに見えた。だが、うまく行かないとキレて暴力を奮うところは直らず、母親や教育係とも何度も衝突してしまう。そんな彼に訪れた青い春。拙い恋愛と判事や教育係の尽力が彼の心に新しい温もりの萌芽を促していった。

名優カトリーヌ・ドヌーヴを主演に添えたことによって作品のレベルが何段階も上がっているのは間違いないのだが、実はこの物語の真の主人公はマロニーだ。彼を演じたロッド・パラトの鬼気迫る熱演により、迫真性を帯びたヒリヒリとしたリアルな現場を垣間見ることができる。監督は女優としても活躍するエマニュエル・ベルコ。ドッシリと根を張った幹のような重厚かつ真実味のあるドラマを作り出すことに成功している。子供は親を選べない。あんな自堕落な母親を持ったら子供がグレても仕方ないだろう。親の責任と子供の繊細さを同時に生々しく描いた作品だ。
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