はる

ダンケルクのはるのネタバレレビュー・内容・結末

ダンケルク(2017年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

IMAXでもう一度見たい傑作なのだけど、躊躇してしまうほどのあの体感。

その日の体調だったりするのかもだけど、スピットファイアの主観視点によるピッチ/ロール/ヨーにはまりすぎて気持ち悪くなってきたのでしばらく視線を外すハメに。途中まで「これは凄いな」と思って入り込みすぎたのかもしれない。こうした経験は『クローバーフィールド』でもあったがアレはただただ苦痛でしかなかったので途中で離席した。

例えば『アバター』でも主観で飛翔するシーンは多くあったがあれは100%ヴァーチャルだったので楽しさしかなかった。今作では実機での撮影ということでリアリティしかなかったし、その感覚と実際の客席に座っているだけの自分の状況との食い違いに耐えられなくなったのかもしれない。

『インターステラー』でも繰り返されたノーズコーン横に相当する位置に据えられたカメラ視点のみでなく、コクピット内からのパイロット視点も加えられることで迫力は十分。CGIに頼らないための工夫に進化を見せた。あえて不自由な手法をとることでしか得られないものを最大限に作品に落とし込んでいる。こういう作家がいることに感謝しかない。

今作はドラマも希薄で登場人物は掘り下げられない。しかしそれは表面的な見方であり、彼らの行動の背景に何があるのかを考えればそれで十分補完できると思う。
ノーラン作品にしては全体の尺が短い今作にあって冒頭の台詞もなくただケガ人を担架で運ぶだけのシークエンスの冗長さがユニーク。あれでドラマ性に関してはある程度の覚悟が出来た。今作では全体の構成としてもそうだが、局面でもタイムリミットがあってそれらに対応させられる人びと、という構図がしつこいまでに繰り返される。そのしつこさに辟易しそうな頃に民間船による救出劇があって有無を言わせず感動的なシーンになっている。リアリティはともかくとして。

オリジナリティは評価するがホントに変わった作品を作るな、という感想が個人的に定着しつつあるノーランだけど、とうとう実話ベースの作品を撮ったということでますます今後の制作に期待がもてる作家であることは間違いない。

※2017年9月29日鑑賞後のレビュー
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