カツマ

映画 聲の形のカツマのレビュー・感想・評価

映画 聲の形(2016年製作の映画)
4.5
いつも猫背でアスファルトばかり見つけて歩いてる。自分が生きている意味も見出せず、消えてしまいたいと思える過去があったなら、きっとこの映画を見てどうしようもなく泣けてしまうと思う。自分一人ではどうやっても開けられないほど重く感じる扉の前でうずくまっていても、誰も気付かないと思ってた。本当は扉の向こうに手を伸ばしたいと、その聲は叫んでいたのに。
思春期の苦しさをこんなにも瑞々しく描けるなんて。画はキラキラと輝いているのに、リアリティのある命題は突き刺さるほどに現実的だった。

高校3年生の石田将也は続けてきたアルバイトを辞め、貯めたお金を母親の枕元に置いて外へ出た。カレンダーの日付は今日まで。あとはこの橋から飛び降りるだけだ。
小学6年生の頃、石田はクラスの中心人物的な悪ガキだった。そこへ聴覚障害のある西宮硝子が転入してくる。はじめは硝子と簡単なコミュニケーションを取るだけのやり取りが、次第にイジメにエスカレートし、その結果硝子はまた転校していった。石田はイジメの主犯として槍玉に挙げられ、今度は逆に周りからイジメの標的にされる。
高校3年生になっても石田はイジメられた過去を引きずり友達もできず、一人でクラスの隅に座る日々。もう死んでしまおうかと思った矢先、彼はかつて自分がイジメていた硝子に謝罪に行くため、彼女が通う手話の教室へと足を向ける。

本当に人に優しくできる人はどこかで苦しみを抱えてきた人。それは苦しんでいる人の気持ちが分かるから。主人公は過去の自分に罪悪感を感じ続け、自分が幸せになってはいけないのだと、どこかで思っている。

でも、優しくなった彼に友達ができる(特にアフロヘアーの篠束くんはめっちゃいい奴)。彼は何度も自分の殻に閉じこもろうとするけれど、新しくできた友達たちは彼の視線を少しずつ高いところへ向かせて、手を差し伸べてくれる。もう自分を許してもいいんだよ、と何度も言いたくなってしまい、そのたびに涙が止まらなくなってしまった。

山田尚子監督作品はじめてでしたが、すっかり魅せられてしまいました。世の中の一人で苦しんでいる人に、あんなラストシーンが待っていたらいいな。