カツマ

ウィッチのカツマのレビュー・感想・評価

ウィッチ(2015年製作の映画)
3.7
見えない闇の中にズブズブと飲み込まれていき、気付いた頃にはもう遅かった。ある家族に待ち受ける悲劇。それは徐々に濃くなっていき、ある時点を境に奈落の底へと転落していく。
タイトルにすでに示されているが、この物語は全編を通して『魔女』を暗示するメタファーで覆われている。舞台はニューイングランド。1692年、セイラム魔女裁判が行われた忌まわしき歴史を抱える土地だ。何故か不気味な視線をこちらに向ける動物たち。キーワードはもちろんキリスト教だった。
この映画を見たシャマラン監督がアーニャ・テイラー・ジョイの演技を見て『スプリット』に抜擢したらしいがそれも納得。吸い込まれそうな瞳にどうしようもなく不穏な影が写りこむ。

〜あらすじ〜
1630年、舞台はアメリカ大陸ニューイングランド。キリスト教を盲信するウィリアム、キャサリンの夫婦は、宗教上の理由で村の方針と決裂。5人の子供を連れ村を後にした。
家族は深い森近くの荒れ地の小屋で過ごすことになり、残り少ない家畜を飼育しながら、何とか食いつなぐような生活を強いられることになる。そんなある日、まだ赤ん坊のサムが姿を消した。その場にいた長女のトマシンは母キャサリンから疑心暗鬼の目で見られ始め、ついには魔女の疑いをかけられることになり・・。

まず、赤ん坊のサムが消えるのだが、その後にある不気味なシーンが映し出される。果たして何をしているのか、よく分からない。だが、最悪のシナリオを想像してしまうのは自分だけでは無いはずだ。この事と同じように、この映画には暗示が多い。不吉なことが起こる前には、必ず何か不吉なサインが出されている。だが、それに気づくのはその何かが起こった後なのだ・・。

常に不穏な空気を纏い続け、その霧が少しずつ家族を狂わせていく様はショッキングでは無いのに恐ろしく怖い。魔女、悪魔、そして。不気味な旋律が不協和音のように鳴り続け、いつの間にか毒のように蔓延していく、それは正に人間の負の感情が呼び寄せた狂気だった。
B級映画のようであるが、実は低予算で見事な完成度を達成した隠れた名品。ラストシーンもなかなかに強烈だった。
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