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ガラスはジャズるのTnTのレビュー・感想・評価

ガラスはジャズる(1958年製作の映画)
3.6
 ガラス製作風景をジャズによってまとめ上げた短編。おそらく現場は轟音で熱気に包まれているはずだが、小粋なジャズがそれをオシャレに仕立てている。そういった点で言えばドキュメンタリーだがフィクション的でもある不思議な映像。

 反復される人々の行為は次第に楽器を演奏しているかのように見えてくる。特にガラスを吹き込む姿は金管楽器を吹くかのようだ。この監督の映画の下では人々や物事はオーケストラの楽隊のようにまとめ上げられているのだ。時折、映画監督と指揮者は似たものとして表現されている点からも言えるだろう(フェリーニの「オーケストラ・リハーサル」やゴダールのいくつかの作品での言及など)。

 中盤、唐突に挟まる機械による不穏な作業。工場の火をあげる音がジャズを中断させると、マシーンによる不気味な反復が始まる。マシーンは誤操作を起こし、人々がそれを止める。ここは明らかに演出だが、機械に対する批判がこめられているように思えた。自然や人々の営みに焦点を当ててきた今作品の監督にとっては、機械はある種ノイズ的であったのかもしれない。


 ガラスの熱でタバコの火をつけるショットがカッコ良い。地味にクレジットの出し方とかも凝っている。相変わらずオシャレな映像だった。
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