KouheiNakamura

シング・ストリート 未来へのうたのKouheiNakamuraのレビュー・感想・評価

4.5
「セトウツミ」が静の青春映画だとするなら、こちらはまさに動の青春映画。
前作「はじまりのうた」でそのセンスに舌を巻いたジョン・カーニー監督の新作。評判が良いことは知っていましたが、本当に素晴らしい映画でした。

1980年代のダブリン。不況にあえぐ街、喧嘩ばかりする親、転校先のゴミ溜めのような高校、規則で縛り付ける教師…。上手くいかないものばかりに囲まれていたコナー少年はある日、モデル志望の女の子に出会う。何か喋りたい一心で、コナーは彼女に言う。「実は今度僕のバンドがPV撮るんだ。君、出てくれない?」その日からコナーはロックンロールに目覚めていく…。

とにかく全編に流れる80年代UKロック、そしてそれに触発されたコナーたちのバンド「シングストリート」の楽曲群がひたすらに魅力的。観ているこちらもつい身体を動かしてしまうような、キラキラした輝きに満ちた曲たちだ。特に今作で僕が好きな一曲は「ドライヴ・イット・ライク・ユー・ストール・イット」。シングストリートがこの曲を演奏する場面含めて、音楽をやる喜びに満ち溢れた名曲だ。
音楽でグイグイ観るものを引っ張っていくこのスタイルは前作「はじまりのうた」から変わっていない。そして、今回はその部分の作り込みが本当に素晴らしい。サントラを買いたくなる人が続出しているのも頷ける。

もちろん青春の甘酸っぱさ・苦さをしっかり描いたストーリーも見事。特に主人公コナーの兄ブレンダンがイイ。かつてはコナーのようにロックに燃えていたが、今はマリファナに溺れて日々を過ごす。しかし、コナーがロックに目覚めたことがきっかけでコナーにロックとは何かを叩き込んでいく。不器用で、でもしっかり熱いブレンダンの一言一言が胸に刺さった。極めつけはあのラスト。旅に出るものがいれば、当然見送るものもいる。爽快感で胸がいっぱいになるラストだった。

とにかくロックを、いやさ音楽を愛している監督が全身全霊で挑んだ青春ロック映画。最高に楽しかった!決断するなら、今。劇場へgo now!!
KouheiNakamura

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