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スイス・アーミー・マンのあすとろのレビュー・感想・評価

スイス・アーミー・マン(2016年製作の映画)
4.3
“死”をもって、“生”を知る。

無人島で助けを求めるハンクは助けが来ないため諦め自ら命を絶とうとする、がそこに男の死体が流れ着く。
そして調べるとその死体からガスが放出されまるでジェットスキーかのように動けることを知る、死体を駆使して無人島を脱出しようと試みハンクの運命は?果たして故郷に帰れるのか?というストーリー

ダニエル・シャイナート監督の初長編作品、なるほど!コメディで観やすいが深い!
単純な内容にしてはぶっ飛んだ設定で笑えつつ色々と考えさせるところもあって面白かったです!

多くを語らない、ダニエルラドクリフ演じるメニーが何処から来たのか?何で死んだのか?なぜ身体に多くの“機能”が付いているのか?などあえて多くを語らずシンプルに、そのおかげでスッキリ観やすくなっているのはある意味脚本兼監督のダニエル・シャイナート監督の手腕が輝いていたのかなと思いました。
元々シャイナート監督自身独特な“死生観”を持ってるからなのか「死に触れて生を知る」というのを感じました。(監督自身の過去についての情報が見当たらずバックボーン等分かりませんでした…)
元々シャイナート監督が過去に監督したMV、manchester orchestraのsimple mathsでも交通事故という“死”の瞬間に幼少期からのフラッシュバック、いわば“生”を感じる作品を撮っています。
監督自身、死や生に関して特別な感情や思想があるのかもしれません、次作の「ディック・ロングはなぜ死んだのか?」も死を軸に話しが動いてますし。
「死を感じるから生に幸せを感じる」「生が当たり前になるから死を求める」そんな考え方があるからこそ、死の淵に立った主人公が死体と行動を共にする事によって生の実感を味わっていく展開になるのかなと感じました!

また当たり前に生きてるからこそ気にならない事は死体からすれば非日常、のようなズレの笑いなどが常に盛り込まれていてそれがまたいいアクセントになっていて頭を空っぽにして観ていてもとても楽しい作品でした!
普遍的だけどどこか心を温めるようなクライマックスはとにかく優しい気持ちになりました!
こういう作品ももっと増えてもいいと思うんですけどね。
海外スラングのジョークは結構笑いました笑

内容が内容だけに結構なカルト映画ではありますが、ふっと笑えるシーンも多く(ある程度下ネタに許容がある人なら)友達とかとポップコーンを食べながら楽しめる作品だと感じました!
配信などで楽しめるようになっています!
好き嫌いは分かれると思いますが、予告編を観て「気になるな」と思った方は是非ご覧あれ!オススメです!
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