あすとろ

劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライトのあすとろのレビュー・感想・評価

5.0
列車は必ず次の駅へー
では舞台は?
“あなた”たちは?

※ストーリーはFilmarksに記載されているため省略させていただきます。
Twitterでも感想を投稿しています→https://twitter.com/a_stro_07/status/1498994831384670210?s=46&t=kphSPLtsSSXLfUMNScvK4w

元々本作は2022年に観ていたのですが、あまりにもの衝撃とキャラの思惑、楽曲、舞台装置など何層にもメッセージ、メタファーが重なっているが故に紐解ける部分が多すぎて感想を書くのを躊躇っていたのですが、先日2回目を観てきたので書きます。

まず大前提として99期生のみんなが先輩として活きていて、その上しっかり学園描写を見せてくれる。
それだけでもTV版から追ってた人は観る価値アリなんですけどそれを踏まえた上の中盤〜後半ですよ…
スタァライトが終わってしまってどこか地に足がついてないキャラ達と我々観客に、ある種ヒール役のような、そしてどこか破滅願望を抱えたような大場ななが突きつける痛々しさと「現実」
自分で切り開き歩まなければ主演どころか舞台の上にも立てない、「お前たちはただ突っ立って待ってるだけで良いのか?」と問いかけますが、それは我々観客にも刺さる一言
毎週待っていれば放送されていたTVシリーズが終わった、もちろん色んな視聴者が“その先”を求めましたが「果たしてそれでいいのかい?」と突きつけてくる訳です。
この後で話しますが、舞台少女達、そして我々も「映画館」という“舞台”に観に来ている時点でスタァライトされ救われているのです。
TV版でもキーになっていたななが最後の最後まで鍵となり、軸となって話が動く。
脚本の樋口さん本当に凄いなぁ…と感じた。

話の展開など細かい部分を話したいですが、ここでは「舞台」と「観客」を中心に話します。
後半、華恋vsひかりのシーンで華恋が「観客席ってこんなに近かったんだ」と呟きます。
これは完全に映画を意識したセリフであり、もう2人は正真正銘“舞台少女”になっている事を表します。
TV版のようなレヴューでは劇中の観客も、スクリーンの向こう側の観客も満たされないからこそ、足を進める常に成長しなければならない、だからこそワイルドスクリーンバロックを行う必要があった。
ちなみにこの「ワイルドスクリーンバロック」は映画のシネスコ画角(ワイドスクリーン)を意識したネーミングでしょうね。
だからwi(l)d-screen baroqueのLだけ括弧で区切られているのだろうと。
話が逸れましたが、進路などで自分の意味などを深く考える中で行われたワイルドスクリーンバロックで再度、舞台少女である意味、舞台を行う意味、はたまた自分がいる意味、『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』という作品、コンテンツが存在する意味を問い、問われる訳です。
そこで上記全てに意味を持たすのがキリンであり、応援していた我々「観客」なのです。
観客が観たいから舞台がある。
観客が観たいから舞台をやる。
観客が観たい舞台があるから舞台少女がいる。
観客が観たいから『レヴュースタァライト』というコンテンツがある。
彼女たちに火をつけるのはキリンでした、そんなキリンは最後「こんな私にも役目があったのですね…」と言い燃え尽きます。
我々が火を灯し、燃えた彼女達の魂の舞台を観て我々が火を灯される。
舞台少女は舞台の上でしか輝けない、それは観客も同じで観客も「観客席」という“舞台”でしか花を持てない。
自分の力で切り開き、ワイルドスクリーンバロックを戦って“歩み進めた”彼女達も、TV画面を観て舞台少女達のレヴュー待ってるだけだったが映画館へ“歩み進めた”我々観客も讃美する。

そして華恋とひかりの“運命”で舞台に立った2人がレヴューを行う事で99期生達、そしてそれを観ている観客我々も全てまとめて「スタァライト」する。
スクリーンの向こう側にいる人達をも認め、救う。
そして死と生、破壊と再生の象徴でもある東京タワーが壊れ、ポジション0に刺さる。
ポジション0はゴール地点でもありスタート地点でもあります、『劇場版 少女☆歌劇レビュースタァライト』の完全なるゴールであり、少女達の完璧なスタートラインでもある。
スタートラインという事はゴールまで我々観客は応援できる、「観客席」という舞台に居させてくれる訳です。
この120分で全てを終わらし、全ての「ポジション0」を描き、キャラクターや観客全てを認め、肯定する讃美歌劇

作品のパワーで心を満たし、気がつけば涙する。
本当にとんでもない作品でした、どうか定期的に映画館で上映を続けていってほしい最高の1本でした。

列車は必ず次の駅へー
では舞台は?
“あなた”たちは?
あすとろ

あすとろ