あすとろ

哭悲/The Sadnessのあすとろのレビュー・感想・評価

哭悲/The Sadness(2021年製作の映画)
4.1
この世界に正義も、悪もない。
あるのは抑えきれない“悪意”という衝動のみ。

※ストーリーはFilmarksに記載されているため省略させていただきます。
Twitterでも感想を投稿をしています→https://twitter.com/a_stro_07/status/1542750250321858560?s=21&t=NLawZFTmXE4uvXXcT9mVeQ

最悪な傑作、最高な地獄
「何を食べ、どんな環境で育てられたらこんな映画思いつくの?」と感じるような最凶な映画でした…

暴力描写に注目されがちですが、アフターコロナを映してる作品でありつつ、しっかり観客が求めるエンターテイメントとして丁寧に作品が作られてるように感じました。
感染者数が増えても飽和してしまったような世の中、色んな説が提唱されすぎて誰も聞く耳を持たない、医療逼迫により軽症者は自宅療養etc…と誰もが等しく経験した環境と舞台設定を同じにする事で感情移入しやすく、また最低限の説明で話を進められるので話の端折り方としても「上手いなぁ」と感じました。

それを踏まえた上で暴力描写ですよ…
地下鉄の大虐殺のシーンでは企画書を鉄道会社に見せたら即却下されて地下鉄のセットを組んで何とか撮影した程「映画」という大義名分を名乗ってもやり過ぎなくらい殺してます。
ただ、ぱっと見許容し難いような暴力描写や性描写に見えますがこの「狂気」は誰でも秘めてるように感じて、例えば「満員電車で隣の人に足を踏まれたけど詫びの一言も無し」とか「職場、学校の仲良くも悪くもない人から浴びせられた何気ない一言」だったり「上司からの理不尽な怒られ」など、日常を生きていたら誰しも一瞬だけでも必ず「こいつクソムカつくな」と感じる場面ってあると思います。
しかも理由があるにしても理不尽な理由だったりと…
「何やってもOK」ってなったら多かれ少なかれ、その凶暴性を解き放つ、もしくは解き放ちたいと感じる人が多いのではないでしょうか?
だからこそその理不尽さが本作の暴力性、凶暴性とリンクしどこか絵空事だけど、実際にそんな状況になれば「人間側にもゾンビ側にもなりそうだな」と感じさせる、また秘めてる凶暴性を本作の過剰なまでの映像に乗せて発散させるような人も多そうだなと感じました。

コロナや日々の生活で疲れてる&立場が上の人間からの「理不尽」に耐えて病んでる日本人にとってはある種、最高でサイコな作品が公開されたと思います笑
劇場という逃げ場のない環境で味わう暴力に支配された100分間、是非ご覧あれ。
あすとろ

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