神戸典

パターソンの神戸典のレビュー・感想・評価

パターソン(2016年製作の映画)
3.0
この作品においてパターソンと彼女の性格が正反対であるところに鍵がある。
パターソンは自らの故郷に住み着き、代わり映えしない毎日を過ごす中で、詩という外向きの行動をするものの、それを特に出そうとせず、内に秘めているだけだ。
彼女の方はというと、毎日双子を生む夢を見たり、パターソンが銀の象に乗る夢を見たり、カップケーキを街で売ってみたり、ギターを買ってシンガーになったり、夢を描き続ける姿勢だ。

そんな彼女が夢みた双子に関して、パターソンの日常の中でしばしば現れる。
さらに、出会った少女の詩に書かれた滝も実際に公園のようなところにあり、パターソンはその場を気に入っている。
彼女や少女の夢に向かう気持ち、ここにはない何かを求める気持ちが、変化を求めない居心地のいいパターソンの世界にも入り込んでいる。いわば変わらないことと変わることは別物ではなく、一続きの線で繋がっている。

監督の作品はしばしば外への表現が多いらしく、それを表現するときは画面の右から左へ役者が歩いていくという。
今作も、パターソンが変化の兆しを得る場所には右から左へと歩いている。
そして家に帰るときは決まって左から右へのアングルとなっているそうだ。
一見気づかないようなベクトルの向きを内容だけでなく方法でも描いているのが素晴らしい。
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