撲殺

冷たい熱帯魚の撲殺のネタバレレビュー・内容・結末

冷たい熱帯魚(2010年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

かの有名な「埼玉愛犬家連続殺人事件」をモデルにした作品。小さい熱帯魚店を営む気弱な男社本が娘の万引きをきっかけに大型熱帯魚店を営む村田と交友関係を持つ。しかし村田には恐ろしい裏の顔があった…という話。めちゃ怖。

何が怖いかってそりゃもう村田を演じたでんでんだ。怖すぎる。気を許してた相手がいきなりあんな感じに豹変したらビックリを通り越してチビりますわ。ボデーを透明にすれば分からない。その通りなのだがそれを真顔で言い放つのがこの村田という男を表している。

しかし村田は社本にとってのタイラー・ダーデンのような所謂「男性像」なのではないかと思った。ひ弱で嫁からも娘からも下に見られている社本に対し、自分の妻だけでなく社本の妻も肉体的に支配してしまう村田。男性という生物においてどちらが優位なのかは一目瞭然だ。

また我々が身近に接する男性としての優位な存在といえば父親だろう。幼少期は父親に頼り、やがて男性として超えられない(力や家庭内での権力、財力など)父親を恐れるようになり、そして気付いたら父を超え、その役割を継承される。村田も父親に相当な恐れを抱いているようなので、もしかしたら村田の暴力性は父親から譲り受けたものではないかと思う。そして村田は自分が死んだら社本に自分の役割を担わせようとしていた。親子関係にも見られる継承である。

社本は最後に大爆発を起こし、村田を殺す。これで社本の男性としての本能が滾ったかと思いきやゲーゲー吐いているヘタレな社本にどこか愛らしさを感じる。

ただの残酷物語で終わらせずしっかり考察の余地を残してくれている映画である。

ただ自分の妻にあそこまでさせるかね園子温さん…すごいわ
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