三郎丸

愚行録の三郎丸のレビュー・感想・評価

愚行録(2017年製作の映画)
3.9
【心のザラつきが凄いですよ】

胸糞悪い映画シリーズ

主人公田中は残虐な
「一家皆殺し事件」
を追うルポライター。
そういう事件を追うのであるからに、当然正義(まっとうな人)側に存在し、鑑賞者は主人公に同調して非道な犯人を追い詰め、スッキリしようとします…
しかし!そうはいかないのです。

「お年寄りに席をゆずる」
という行動は、一般的には正しいことですが、誰にでも当てはまる正論なのか?
私たちの【心の中にある正義】に立ってこの映画を見ようとすると
「正義?なんじゃそりゃそりゃ!」
出川哲朗氏のツッコミの如く(個人的に使いたかっただけ)いとも簡単に否定されます。

作中、殺された田向の会社の友人は、田向と付き合っていた女性に対して二人で散々酷い仕打ちをしたことを、自慢話のように語り、挙句に
「あんないい奴が死ぬなんて」
と泣きます…
自分の立場でしかものを考えない、見ようとしない。
正義を知る私たちは鑑賞しながらそれを唖然として捉え、嫌な気分になります。が、それは残念ながら
【矯正的正義(正義のヒーロー)心】
からくる気持ちで捉えてるだけなんです。
私たちは社会的生物であるがゆえ、幼い頃から
「社会でみんなに役立つ立派な人に育ちなさいよ」
と親や学校の道徳等々で教わってきただけで
【自分の本当の心根は色々あるよ】
と気づいてるハズなんです…
だから、何かをきっかけとして人間同士のトラブルは永遠に無くなりませんし、殺人事件、戦争も無くならない。絶対に。

妻夫木聡
・主人公の陰気な男を淡々と演じる。一家皆殺し事件を追いかけながらも、とても興味なく見える…
・心の闇を完全に見せず、バスの客に静かに自然に溶け込みます。みんな同じです、残念ながら。
・終盤の新聞を軽く叩きつけるシーンが個人的に「何で?コワ!」ポイント

満島ひかり
・スタートから笑顔を見せるも狂ってしまっている。終始凄かった。
・独り言のシーンは必見。
「ホンモノかえ!?」
と感じてしまいました…

主人公田中が取材して回る田向夫妻の関係者は
それぞれが自分勝手な視点で語り、
また別の語り手によって語られる話で
ついさっき聞いた話が全然別の面を見せてきます。(そんな話良くありますよね?)
語り手によって話が全く違う色を見せるので、鑑賞者は話が進むほど真実がわからなくなり、混乱していきます…
それが最後に、点だったピースが合わさって1つの線が見えてくる…

この作品、画面がずーーっとスッキリしないところも良かった!

ヘンテコホラー作品よりよほどガクブルですよ。
ゾワゾワとしたい人にオススメ!
三郎丸

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