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見栄を張るのsingerのレビュー・感想・評価

見栄を張る(2016年製作の映画)
3.5
いやいや、これはちょっと勘違いして観てしまったけど、結果オーライで中々良かったです。
泣けない女優 → 姉の訃報 → 葬式でも泣けず
→姉が生前 “泣き屋” の仕事をしていたのを知る。
というあらすじを見て、タイトルからしても、もうちょっとコメディタッチなものを想像しながら観たのですが、意外にしっかりしたヒューマンドラマの佳作だったと思います。
作品を通じて、「泣き屋」という職業の存在意義を理解することが出来たと思うし、
なんとなく「おくりびと」を観た後のような気分にさせられましたね。

主演の久保陽香も、初めて見る女優さんでしたが、とても良い演技でした。
ファーストシーンから、エンディングを通して、
主人公の豊かになっていく温情や、人間としての成長が、はっきりと見て取れたし、
ラストシーンはとても素敵な表情が印象的でした。

監督の藤村明世も、初の長編映画とは思えないくらい、
しっかりとしたテーマを持ちつつ、スッと入っていけるような上手いリードがあったなぁと思ったし、次の長編作品も見てみたくなりましたね。
彼女が監督を目指すようになったというエピソードが、ちょっと興味深くて、
元々、映画女優を目指していたのが、中学時代に撮影現場で参加した、
沢尻エリカとの出会った事で、女優への道を諦めて演出の道に進んだそうです。
なんか、流石エリカ様だなぁと改めて感じさせられたりもしましたね。

後、この作品のDVDに収録されていた未公開シーン。
この中に、作品の印象にかなりハッキリと色が加わりそうなシーンが含まれていて、
そのシーンを敢えてカットした、その勇気、大胆さに、ちょっと感銘を受けましたね。
自分なら、そのシーンはカットせずに入れてた思うなぁ。

さらに、パンフレットの内容が完全収録されていて、監督と久保陽香との対談や、和歌山のロケ地マップ、
小道具の紹介なんかも、見ていて楽しかった。
本編で主人公が着ていて気になっていたRADIOHEADのTシャツは、
音楽好きの恋人、翔の私物だったようで、
他にも主人公の部屋にソニック・ユースのポスターが貼ってあったり、
音楽好きとしては、センスを感じるアイテムがチョイスされているのも興味深かったです。
加えて、メイキングや初日舞台挨拶の模様なんかも収録されていて、
色々豪華な特典映像の数々に、さらに満足感が高まった、そんな作品でした。
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