ハル

ウインド・リバーのハルのレビュー・感想・評価

ウインド・リバー(2017年製作の映画)
4.0
友人のおとうちゃんがジェレミー・レナーに似ている。つまり、ぜんぜん格好良くない。早い話がこの映画はぜんぜん格好良くない人が見事な人物造形によって格好良く思えてしまう話である。そして、そういう人が美味しいところを全部持っていってしまう話である。

…なんてことを言ったらヒンシュクを買うに決まっているので、早速、本題に入ろう。

この作品で描かれているのは、文字通り、「アメリカの闇」である。

舞台となるのはワイオミング州にあるネイティブアメリカンの保有地。厚い雪化粧に覆われた峻厳な土地である。そこで先住民の女性が遺体となって発見される。FBIの女性捜査官は、第一発見者のコリー(ジェレミー・レナー)とともに捜査をはじめ、やがて、驚愕の事実に辿り着く。

ここで言う「アメリカの闇」とは、先住民の土地とそこに住む人々がアメリカ社会から隔絶されている、という点である。人々は貧しさに苦しみ、アルコールと薬に溺れること以外に何の楽しみも持たない。そして、何より、法の支配と警察力が及ばないため、常に犯罪に巻き込まれる危険に晒されている。そうした実態がサスペンスフルなストーリーテリングによって次々と暴かれていくのである。

要するに、この作品の本質は、映画という手段を借りた「問題提起」ということになる。

何も知らない私は、容赦ない作品世界に引き込まれながら、その中に、存在を消されたネイティブアメリカンたちの声なき叫びを聞いた。そして、己の無知さ加減を激しく呪った。

映画を見て落ち込んだのはいつ以来のことだろう。

監督の勇気ある問題提起によって、ネイティブたちへの処遇が改善されることを、願ってやまない。
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