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淵に立つのkuuのレビュー・感想・評価

淵に立つ(2016年製作の映画)
3.8
『淵に立つ』
映倫区分 G.
製作年 2016年。上映時間 119分。

深田晃司監督が浅野忠信主演でメガホンをとり、第69回カンヌ国際映画祭『ある視点』部門で審査員賞を受賞した日本・フランス合作人間ドラマ。
静かな狂気を秘める主人公を浅野が熱演し、彼の存在に翻弄される夫婦を筒井真理子と古舘寛治がそれぞれ演じた

下町で小さな金属加工工場を営みながら平穏な暮らしを送っていた夫婦とその娘の前に、夫の昔の知人である前科者の男が現われる。
奇妙な共同生活を送りはじめる彼らだったが、やがて男は残酷な爪痕を残して姿を消す。
8年後、夫婦は皮肉な巡り合わせから男の消息をつかむ。
しかし、そのことによって夫婦が互いに心の奥底に抱えてきた秘密があぶり出されていく。。。

見た目は平和に生活を営んでる家族が、
ある日、
 ある時、
  ある場所で、
ひょんな事をキッカケに、
一瞬のように絆が破壊される。
月日がながれ、壊れた己の家族を振り返れば、
崩壊は一瞬の出来事やったんちゃうかって思てたのは、実は、
徐々に、そして、着実に崩壊の道を辿っていたのに気付く。
『気付く事が出来たらやり直せる』
なんて云う人もいる。
しかし、過去は変えれない。
映画やドラマやとしばしば変えられるけど現実は悲しいかな今はムリ。
実際、過去に営みを続けた同じメンバーでのやり直しは難しい。
誰かが欠けたり、心を閉ざしたりet cetera。
そんな、現実をシュールに描いたんが今作品やと思う。
始まりから、妙な違和感を感じる位い、デフォルメされた描写が続く。
家族が崩壊の途を辿るキッカケとなる者が時にはいる。
その者の目的は、最初から家庭崩壊を望んでの行動と、目的は無いけど、元々のマイナス要素を連れてくる場合もあると思う。
作中の人々の様々な思いが、頭蓋を巡り、
もう、これ以上ええやんっ!
ちゅう位いの物語の斜陽も、
えぇ~っちゅう感じで、これでもかぁって位のドツボ展開が続く。
観てる方も、将に絶望の淵に立たされちゃう、不条理な、えも云われんモンを味わえたエモい(こんなときはエモいつかわないかなアハハ)。
夫の古傷、妻の不貞、パズルはどこで間違ったんやろか、どこをどうすりゃ良かったんか。
家族の音、
  ニオイ、
    そして、息づかいが伝わってくる。
救いの光は見えにくいラストやけど、
時として人生てのは、そう云うもんかなぁって頷けたエンディングやと二度目視聴で思いました。
今作品は、非常にリアルで説得力があり、『罰』ちゅうテーマが映画全体を通して表現されてる感じがします。
キャラ、そして家族の崩壊は、人が直面する避けられない運命を如実に表しています。
鈴岡利雄(古舘寛治)は、自分が受けるべき罰から目をそらすかのような生き方をしていたが、草野が家に来たことで恐ろしい結果に直面し、家族に大きな傷を残し、ついには一家が壊滅することになる。
妻(筒井真理子)は、夫が罰の話をするうちに精神的に不安定になり、運命を受け入れられなくなる人の象徴で、彼女の受け入れられなさが、やがて見事な結末へとつながっていく。
これはめちゃ見事な象徴であり、個人的にこの最終的な罰というテーマに納得した。
なぜなら、その罰の結果は非常にリアルなものであり、恐怖すら感じた。
また、素人眼ながら技術的よくできてたかな。
撮影は、映画のトーンに合った非常に暗い雰囲気を作り出し、サウンドデザインは非常に細かく、今作品を非常に不安にさせるものでした。
途中、美しいショットがたくさんあり、中でも川のシーンは際立ってたかな。
ただ、終盤の筒井真理子の錯視シーンは、正直、意味不明。
なぜそれが次の展開の引き金になったのかも分からなかった。
しかし、これはおそらく私の分析不足のせいで、その時点で映画の中に引き込まれ、細部までキャッチする能力を持っていなかったからかな。今作品は、様々な象徴やテーマから深い分析が必要な映画の一つだと思います。
今作品は、多くの日本映画に欠けているリアルさを持った、脚本も演出も巧みな映画でした。
これは、過大評価された俳優が台本を読んでいるだけの日本映画とは比べものにならないかな(失礼ながら)。
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