ドン・シーゲル監督の『白い肌の異常な夜』(1971)をソフィア・コッポラ監督が46年越しにリメイクした作品。コリン・ファレル演ずる負傷兵が森の中の女子学院に迷い込むことで生ずる愛憎の渦を描きます。
ーー新旧
本作もシーゲル版と同様に、全編を通して画面のトーンは暗めでした。しかし、シーゲル版では"生々しさ"や"おどろおどろしさ"が前面に押し出されていたのに対して、本作は仄暗さのなかに"気品"が立ち上っていたのが印象的です。熱に浮かされた"狂気"とも呼べる情動に突き動かされていたシーゲル版の登場人物達とは打って変わって、あくまでも冷静で理性的な意思決定に重きを置いた演出となっていたように思います。それゆえ、前作の激しいテイストを求める人には本作はやや物足りなさを感じたかもしれません。
ーー波紋
もっとも、静かな水面にそっと投げ込まれた石は穏やかながらも確かな波紋を形成します。揺れる心理の行く末を注意深く見届けることで、ソフィア・コッポラ監督の演出の繊細さに触れられる点は本作の紛れもない魅力だと思いました。