Rocko

午後8時の訪問者のRockoのレビュー・感想・評価

午後8時の訪問者(2016年製作の映画)
3.7
ベルギーの名匠ダルデンヌ兄弟監督の作品とのことで試写会に応募して外れたやつ。
実はこの監督の映画は前作『サンドラの週末』しか観ていないのですが、これが地味に面白かったので。

最初から俗に言う緊張感のあるミステリー作品ではないだろうなと想像していたら、やはりサスペンス色は弱く社会問題を織り交ぜたヒューマンドラマというか、派手さの無いヨーロピアンテイストな映画でした。
正直、真相の解明はあまり重要ではなく、プロセスを重点に置いて観る映画だった。
この作品は好き嫌いが分かれそう。

自分はウィ、サヴァー、ボンソワ〜の雰囲気だけでも楽しめるタイプなので主人公のコートが前から見ると襟がついてカチっと見えるのに後ろからだとフードがついてカジュアルに見え、インナーの色にも意味があるのかと常に色々なことを想像しながら鑑賞できる作品で面白かったです。

最初から手振れカメラで揺れる〜
リアリティ追求型なご兄弟ですね。

診療所の女医さんがタイトルの『午後8時の訪問者』のドアを開けるか開けないかで人生がガラッと変わっていたかもしれない。
たまたま事件に巻き込まれた日常が音楽の盛り上げも無く、無駄のないドキュメンタリー仕立てで展開されて行きます。
事件そのものに緊張感があるというより、カメラが主人公にやたらと背後から寄って不気味。事件以外の人間模様も全て日常。

ボーっとサスペンスの結末だけを目標に観ていたら退屈かもしれないが、実は近年問題になっているヨーロッパにおける移民問題とリンクしており、ドアの外にいたのが移民で中にいたのが母国の女医。
診療時間外の患者を受け入れるか締め出すか=移民を受け入れるか否かで自分の人生も相手の人生も変わって行く。

テロ被害も多いヨーロッパで非常に難しい問題ですが、他にも格差や家庭内暴力など深く見ればメッセージが詰め込まれた作品でなかなかに重い映画でした。

2020年12作目
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