ちゃんちゃん焼き

お嬢さんのちゃんちゃん焼きのネタバレレビュー・内容・結末

お嬢さん(2016年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

すごく面白かった。3部構成になっていて、誰が騙し、誰が騙されるのかスリリングで、次々と前提をひっくり返していくプロットが秀逸。一部で、「あれ、これ変だな」(例えば草むらで伯爵とからんいるお嬢さま秀子が大胆に脚を開いているんだけれど、初な秀子にできるポーズじゃなくて違和感を感じたところ)と思ったところが次でうまく回収されていた。
エロティックな場面はあからさまなところもあったけれど、概ね美しく描かれていて、秀子とスッキの絡みのシーンは激しくも艶めかしい女の世界が堪能できる。
屋敷の主人(秀子の叔父)はかなりサディステックで、いわゆる「変態」的な趣味をもち、屋敷に紳士を招いては卑猥な本の読書会を開いている(読書会兼本の競売)。秀子が読書会を嫌がっていたのは、春画などのわいせつな本を読まされるからだというのが後からわかる。幼い秀子に卑猥な単語を読ませる練習をするくだりにひきこまれてしまうし、大きくなってから、秀子が木の人形と体位を確認するシーンが妖艶でとても美しかった。幼い頃から秀子が怯えている謎の地下室は巨大な蛸までいる(北斎の春画蛸と海女がお好み)、どぎつい拷問部屋。屋敷の各部屋の調度品や装飾などもかなり凝っていて、ついつい見入ってしまう。

わたしがいちばん共感出来なかったのは、スッキが主人の貴重本(掛け軸類含む)をめちゃくちゃにしてしまう場面。もちろんスッキには春画が芸術品だなんて意識はないだろうし、何よりお嬢様を苦しめたものなのだからそうして当然なのだろうけれど、切り裂いていく場面を見るのはあまりに心苦しかった。芸術に罪はないのに、と。確かにひとの命とくらべたら軽んじられるとは思うけれど、美術好きにはちょっと苦しい場面だった(それが作者の意図なのだと思いつつ、やはりきびしい)。
それから、役者の方かなり頑張って日本語を話しているのだけれど、肝心の秀子とスッキの会話のところが二度聞いたのに聞き取れなくて残念だった。字幕入れてほしかったなあ。
その二点がやはりどうしても気になったので、少し点数を下げたけれど、ともかくも観てよかった。

原作がイギリスの小説と聞いて、何か納得。イギリス人の変態さがにじみ出ていた気がする。原作も読んでみたい。