Adachi

LOGAN ローガンのAdachiのレビュー・感想・評価

LOGAN ローガン(2017年製作の映画)
4.3
正義が報われない現代の中で、現代人が真に求める「真のヒーロー」とは何か。

個人的に[X-MEN]シリーズは、テレビでちょこちょこ観てきた程度でして、このシリーズに関してはほぼ知らないのですが、年老いたヒュー・ジャックマンを映したアンチポップな映像のまるで西部劇のような質感と、同時にナイン・インチ・ネイルズの「Hurt」が流れる予告編を見たときからアメコミ映画とはまた違った魅力を感じておりました。

かつては無敵の特殊能力を持ち、世界を救ってきたヒーロー「ローガン」の末路とは、片足を引きずりながら、その老体で過酷な労働と介護生活を送るだけのただの老いぼれに成り下がっている。
こんな地味なヒーローいるか?とも思いながら、これこそヒーローだろうが、ミュータントだろうが、人間誰もが必ず向き合わなければならない現実そのものだと思ったりもして泣けてきます。

印象的だったのは、少女ローラの出生の事実。
メキシコ移民の女性とミュータントの遺伝子から人間兵器を作ろうとするあの施設は、移民を同等の人間と見なさず、低賃金で過酷な労働を課してきたアメリカの状況を暗示しているようだった。
彼らもまたアメリカ国民として認められ、居場所を持とうと貢献してきた存在なわけで、たとえ一部が敵意を向けようと、アメリカがアメリカでたりえる存在なのだという事実は否定できないと思うのです。

そしてそんな世界の中で、「真のヒーロー」とは何かを本作は示しており、老人のために食事を作ることも、子どもに優しくすることも、どんなに小さなことでも未来のために、他人のために今自分ができることを行うこともまた英雄的な行為だと思う。

ローガン自らが否定しようがローラが娘であるように、世界が否定しようがローガンの自分以外の誰かのために血や涙を流す姿こそ「真のヒーロー」なんだと感じました。
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