Film日記係

ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリーのFilm日記係のレビュー・感想・評価

4.0
【ネタバレ含みます】

スターウォーズのスピンオフ作品としては第2弾であった今回の「ハン・ソロ」。前回のスピンオフ作品の「ローグワン」はep4をより良くする絶妙なストーリー展開を見せてくれたわけだが、この映画は同じスピンオフ作品でも毛色の違うものであった。テーマとしては、ハン・ソロという1人の男のep4以前の過去を通して、我々の知るハン・ソロはどのようにして生まれたのかというものであり、本軸のスターウォーズ映画からかなり独立したものであった。それでも、物語の中で出てくる人物や物単位で見ていくと、ep4・5をより良くしているものであることは間違いなかったし、ハン・ソロを演じたオールデン・エアエンライクもハン・ソロの人物像を上手く再現できており、かなり満足できる映画であった。

この映画の主人公は言うまでもなくハン・ソロである。ハン・ソロはep4~6の中心人物であるのだが、彼がどういう人物なのか、詳しいことは意外にも語られていない。パッと浮かぶことといえば、ミレニアム・ファルコンの船長をしていて、相棒がウーキーのチューバッカで、借金をしていて賞金稼ぎから追われていることぐらいだ。今では、ep7のカイロ・レンの父としてのハン・ソロの方が印象的かもしれない。それでも、ミレニアム・ファルコンや"Han shot first"など、ハン・ソロの代名詞となるものは数多く、愛着のあるキャラクターだ。この映画はこうしたハン・ソロの代名詞が代名詞と言われるようになる起源を描いたものと言っていいだろう。

ハンは物語のはじめは故郷のコレリアで犯罪を強要され、隷属同然の扱いを受けて生きていながらも、将来は宇宙一のパイロットになるという野望を抱く青年であった。幼馴染みのキーラと共に自由を求めて脱走を試みるが、キーラが途中で捕まってしまい、1人になったハンは帝国軍のパイロット養成アカデミーに入る。ハンはここで"ソロ"という名をもらう。もともとハン・ソロではなかったという点に大きな驚きがあった。

その後、ハンとチューイの出会いが描かれる。その出会い方も最初はお互いがお互いを傷つけるところから始まっていて、そこから行動を共にして、最後には良き相棒役になる様子がよく描かれていて、2人が親友となったキッカケが明確化されていた。ただ、行動を共にしてから、1度も意見が衝突したり仲違いしたりなどの紆余曲折がなく、割と平坦だったのが、多少物足りなかった。

物語全体を通して、ハンに馴染みの深い物の登場に心を揺さぶられることが何度もあった。
物語の序盤からハンはep4や8でも登場したりダイスを手にしていて、そのシーンには不意に笑みがこぼれてしまった。
中盤から登場するミレニアム・ファルコンは、観ている僕に相変わらずの様相を見せていたが、ハンとミレニアム・ファルコンが出会った瞬間と思うと、とても新鮮味を感じた。
また、ハンがep4から所持していたブラスターも、物語の中でハンが手にすることとなる。その渡され方もさりげないものであって、それが逆に良かった。

旧キャラクターとして、ep5・6で登場したランド・カルリジアンが今回は中心人物であった。ランドは腕利きの博打打ちで、博打で勝った金で船などを集めていた。ミレニアム・ファルコンをもともと所有していたのはこのランドである。ハンとランドがミレニアム・ファルコンをめぐって博打を打つ場面は、個人的にこの映画で1番好きなシーンだ。この2人の過去を知った上で、ep5で2人が再会する場面を見れば、これまで感じなかった因縁を帯びた緊張感を感じることができるだろう。

新キャラクターも魅力的な人物が何人かいた。

ハンと行動を共にするベケットは、ハンをアウトローの世界に引き入れるキッカケとなる人物で、良き仕事仲間であったが、一方でハンの師匠的な一面があるのが良かった。ハンはもともと心優しい青年であるが、物語を通して、アウトローの世界に身を投じて、このベケットから「周りの人はいつか皆裏切る」と教わる。ハンは最初そのことを受け入れられずにいるが、厳しい現実を目の当たりにし、最後ベケットと銃を向け合うシーンで、ハンは初めて迷いなく銃の引き金を引く。まさに"Han shot first"。"Han shot first"がハンのアウトローとしての心の成長を象徴づけるものとして表現されていたのは、素晴らしかった。

他にも、ランドの相棒のドロイドのL3-37がユーモア溢れる役として、とても面白かった。L3-37はこれまでのドロイドとは違って、乙女心を持っていて、人間とドロイドの平等を強く望む、とても自律心が強いドロイドで、結構好きになれた。また、L3-37は莫大なデータをダウンロードしており、そのデータが最終的にミレニアム・ファルコンに組み込まれるというのは驚きだったし、ミレニアム・ファルコンの特別さがさらに引き立ったと思う。

そして何よりも驚いたのは、黒幕がep1で死んだはずのダースモールであったことだ。アニメシリーズでは復活しているということは聞いたことがあるが、今後ダースモールをどのように使っていくのか、甚だ疑問に感じた。ep9の伏線とは思えないし、一応自分の中では、スピンオフ作品3作目のオビワンが主役の映画に登場させるための伏線かな~ということにしている。

ストーリー展開としては、何か敵を倒したりするような、善と悪という構成ではなく、あくまでハンが船を手に入れる資金を得るために雇われて、資源を盗むというものであるのだが、その中で数々の裏切りが起こったり、帝国軍と接触したりと、映画全体を通して飽きることのないものだった。特に終盤の頭脳戦はなかなか見物だった。

また、今回の映画は、「ローグワン」とは異なり、反乱軍やジェダイ・フォースといった概念が全く登場しなかった。ハンはep4の序盤では、反乱軍やジェダイ・フォースにあまり関心を示さない姿が描かれていたので、この形で良かったと思う。

ただ、ストーリー全体を通して結構多くの組織が出てくるので、観ている最中はどれがどうなのかなかなか整理できず、少々ゴチャッとしている部分があった。

あと、この映画の開始冒頭に大きな驚きがあった。スターウォーズ映画では必ず冒頭に"a long time ago in a galaxy far far away"という言葉が出てから物語が始まるのだが、今回はその言葉のあとに同じ青文字でストーリー設定を述べるという形式をとっていた。できれば密かに愛着のあるあの青文字を濫用して欲しくはなかった。

映像面では、「ローグワン」と同様に、泥だらけになるといった、本軸のスターウォーズストーリーではなかなか描かれないダーティーな部分に焦点を当てていて、スターウォーズという題名に相応しい戦争映画のイメージが強かった。(特に、ハンが帝国軍の歩兵として戦うシーン)

面白さ:0.9 脚本:0.7 人物・演技:0.9
映像:0.8 音楽:0.7
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