KouheiNakamura

哭声 コクソンのKouheiNakamuraのレビュー・感想・評価

哭声 コクソン(2016年製作の映画)
5.0
お前が見たいものが、お前が見ているもの。


実に6年ぶりの最新作となった韓国映画界の若き鬼才ナ・ホンジン監督作品。韓国の片田舎の村、コクソン。この小さな村で巻き起こる、連続変死事件。主人公の中年警官が捜査を進めていくうちに、事件の裏には謎のよそ者日本人が関与していることが分かり…。
今回が初主演作となった韓国映画界の名バイプレイヤーであるクァク・ドウォン、人気絶頂のファン・ジョンミン、そして謎の日本人役に我らが國村隼。


今年いっぱいで閉園になる北九州の遊園地スペースワールド。そこにはブラックホールコースターなるアトラクションがある。要は真っ暗な室内用ジェットコースターである。暗い室内を右へ左へ、上へ下へと振り回される。なんとも独特の味わいがあるジェットコースターである。
この映画はまさにこのブラックホールコースターのような映画だ。

物語は韓国映画らしい陰惨な雰囲気で幕を開ける。雨の降り続く田舎村、ジメジメとした閉塞感が画面に満ちている。そこで起きるおぞましい変死事件。そうして物語はハードな調子で進んでいくのか…と思いきや。意外や意外、この映画は全く想像だにしない方向へと進んでいく。スリラー、ホラー、ミステリー…だけではなくなんとコメディでもあるしドラマである。行き過ぎたオカルトも、B級風味な展開もある。そんな真っ暗闇鍋ジェットコースター。それがコクソンだ。
一寸先は闇どころか、一寸先は混沌である。観る側の五感が振り回され続ける156分。振り落とされずにたどり着く先は……一歩先すら見通せない無明の闇と、無数の困惑が渦巻くギラギラとした灯たちだ。

韓国映画界の実力派キャストの完璧な熱演に加え、出色の存在感を放つ國村隼。自然光での撮影にこだわった映像に、緊迫感を持続させる音楽。
今年一番の大怪作にして、大問題作。混沌と闇に振り回されたい方に、オススメです。
KouheiNakamura

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