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ワンダー 君は太陽のFilm日記係のレビュー・感想・評価

ワンダー 君は太陽(2017年製作の映画)
4.2
すごく楽しくて元気になれる映画だった。
生まれつき顔が人とは違う10歳の少年オギーが初めて小学校に通うその日から物語は始まる。学校1日目は周りの視線やクラスメートの反応から、改めて自身の顔に悲観するも、オギーは自ら行動し、ついにはクラスで注目される存在に変わっていくというストーリーだった。

全体的に起承転結がはっきりしており、物語としてはお手本のような話の運び方だった。

そんな中、この映画の1番良かった点は、物語の主人公はオギーだが、オギーのみならず、その周辺人物の視点でも同じシーンを映していたことだ。オギーに加えて、姉のヴィアや最初の友達のジャック・ウィル、ヴィアの親友でオギーのもう1人のお姉さん的存在のミランダ、この4人に主にフォーカスしていた。この4人はそれぞれ違った悩みを抱えているが、それをお互いは認識しておらず、すれ違いを起こしてしまうという形式だった。ナレーションが結構多かったが、同じ場面を多面的に映す手段として有効に使えており、且つ視点の切り返しもスムーズで上手かった。

また、終盤には彼らの理解が一致していくのだが、決して直接的に解決するのではなく、間接的に、そして自然な形で運べていて、ストーリーの流れとして良かった。特に、オギーの担任の先生が授業で毎日格言を教えるのだが、その格言がオギーをはじめとするキャラクターの行動の原動力となっており、物語が展開する契機となっていたのが、人物の心情変化を間接的に描けていて良かった。

個人的には、ヴィアとミランダのくだりやオギーといじめっ子のジュリアンの関係性については、もう少し深く見せてくれても良かったかな~と思った。

主人公のオギーはかなりポジティブ思考でユーモアがあって、よく周囲を観察しており、学校の校庭や廊下を歩くシーンはオギーの楽しい空想の入った情景を映しており、視覚的に面白かった。特に、オギーはスターウォーズが大好きということでスターウォーズのキャラクターがいくつか登場し、そしてそれがネタになっていたところが個人的に好きだった。
それでも顔のことを悪く言われるとひどく傷つき、なかなかそこから立ち直れない姿も描かれていた。

1番好きだったのは姉のヴィアだった。父と母が弟のオギーを気遣うあまり、自分には気を配ってくれず、理解者だった祖母や親友のミランダを失い、影ながらもつらい心境にさいなまれる姿が描かれていた。自分も長男ということもあって、彼女の心境はよく理解できた。それでもヴィアは新たな出会いをし、それによりミランダとの関係がすれ違うという展開はかなり興味深かった。

あと、出てくる時間は短いが、オギーの通う学校の校長先生の寛大さと偉大さに結構魅了された。オギーをいじめた主犯格のジュリアンへの対応、そしてその両親(教育委員会と繋がりがあるというあるある)に屈さない姿が何とも言えず好きになれた。

映像面では、オギーの空想をコミカルに映していたのが面白くて印象的だった。
他にもオギーが被っているスターウォーズのヘルメットがオギーの心情変化を視覚的に描写しており、明確で良かった。
また、オギー家の飼い犬のデイジーを映すカットが結構あり、誰かが悲しみに暮れるシーンでも唯一明るさを保つ存在として際立っていた。

あとこれは大学受験をひかえる自分だからこそ言えることかもしれないが、映画の中で話される英語がとても聞き取りやすく、字幕を見なくても内容が分かるほどだった。自分のリスニング力を試す受験生には持って来いだった。

人は誰でも悩みや苦しみを抱えており、そのことをくみ取るために、まず自ら行動することの大切さをこの映画では言おうとしていると思った。

面白さ:0.9 脚本:0.8 人物・演技:0.9
映像:0.8 音楽:0.8
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