ミチ

聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディアのミチのレビュー・感想・評価

4.2
心臓外科医とその家族、そしてそこに侵食していくある少年の物語。


「籠の中の乙女」「ロブスター」を観てすっかりファンになってしまったヨルゴス・ランティモス。

今回は「アウリスのイピゲネイア」というギリシャ神話をベースにしているが、よく考えるとこれまでのヨルゴス・ランティモス作品も、どこか神話っぽさがあるんだなと感じた。


神話ベースだからか、これまで観た2作と比べると、シリアスやホラーの要素が強い。

それでもやはり監督が一貫して描き続けているのは、人間の愚かさや滑稽さだ。

耳障りな程に不安を煽りまくる音楽はどうなのと思ったが、無音のシーンになったときに「ああ、このためか」と納得し、痺れた。

カメラワークは相変わらず素晴らしく、冒頭の衝撃から重厚さと不穏さが途切れることはなかった。


そしてやはりこの作品を語るうえで外せないのが、バリー・コーガンの怪演だろう。

彼の演技は初めて見たのだが、これまでの出演作を全部観たくなるほど素晴らしかった。

そしてやはりコリン・ファレルの存在感も素晴らしい。

彼の困り顔はヨルゴス・ランティモス作品にはもはや欠かせない。


とても難解なようで、全身に突き刺さってくるような作品。

劇場が明るくなったとき、自分が立ち上がれるのか不安になった。
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