きざにいちゃん

新感染 ファイナル・エクスプレスのきざにいちゃんのレビュー・感想・評価

3.9
「韓国映画は肉食である」と、韓国映画を見る度に言っているが、この映画もその例に漏れない。

というのもーー
これまでに星の数ほど数多くのゾンビ映画が作られて来たが、基本的にゾンビは「生きる屍」らしく、徘徊するようにゾロゾロ、クネクネ歩くというお約束がある。
が、この作品の韓国ゾンビは、もう、めちゃくちゃ動作が俊敏で瞬足。跳躍力、攻撃力も超人並。恐らく映画史上、世界最速最強のゾンビだ。感染力もしかり。通常ゾンビは噛まれると、まず人として死に、その後、時間を置いてゾンビ化するが、韓国ゾンビは噛まれるやいなや、ゾンビウィルス(?)が全身に巡り侵されてゆく様にほんの数分でみるみるゾンビ化する。感染スピード、感染力も世界最速最強だ。
もうこの点だけで、韓国映画の肉食性は十二分に発揮されている訳だが、展開も肉食。
ハリウッド映画であれば、“あの人は、ああならない”。まだやるのか、と思うほど、クライマックスが「濃い目」に作られている。なりふり構わずに登場人物を激しく揺さぶり、観客の涙までも捥ぎ取ろうとするあたりは、ハリウッドや日本映画では決して見られない肉食性である。

原題は「釜山」だが、邦題は「新感染ファイナル・エクスプレス」。
映画の邦題の多くはピント外れの失敗が多い様に思うが、このネーミングは見事だと思う。
ゾンビ映画の設定やストーリーのアイデアは既に出尽くした感じがある中で、列車パニック映画や『ウォーキング・デッド』で流行りの人間ドラマ要素もミックスして、まさに新しい「新感染」を作り出している。

なお、闘いながら車両を進んでゆく展開は、同じく韓国のポン・ジュノ監督作品『スノー・ピアサー』を想起させるものがあった。彼へのオマージュなのかもしれない。

とにかく、突っ込み所を忘れさせる程のスピード感と工夫に溢れた、とても美味しい韓国味エンタメ作品だった。

(ただ…『82年生まれ、キム・ジヨン』のあの夫婦が、この作品でも主役の二人というのは、ちょっとキャスティングとしてどうなのだろうか…と思ってしまう)