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It Is Fine! Everything Is Fine.(原題)のwigglingのレビュー・感想・評価

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カナザワ映画祭2016オールタイムベスト作品リバイバル上映にて。
監督のクリスピン・グローヴァー本人が朗読する「ビッグ・スライドショー」とペアでないと上映できないという、鑑賞ハードルが極めて高い作品。2008年の同映画祭での伝説的な上映の噂を聞き、なんとしても観たいと思っていた作品です。

まずは「ビッグ・スライドショー」から。自著の抜粋をそのまま朗読している模様。本のページがプロジェクターで映し出され、赤いスポットライトの下でジェスチャーを交えた語りが展開される。
内容は、...よく分からない。日常に潜むグロテスクを描いたような、リンチの世界観に近いもの。映画とは特に関係ないらしいので聞き流しておく。

そして映画本編、これがまぁ極めて特殊な内容で説明に困ってしまう。
脳性麻痺の重度障害を持つ主人公はロングヘアーフェチという性癖を持つ。どういう訳か彼に好意を示す魅惑的な長髪の女性が次々に登場し、彼のことを完全に理解し体まで許してしまう。そしてセックスを済ますと必ず絞殺する。ナニコレ?

グローヴァー氏によると、脚本を書き主演を務めるスティーブン・C・スチュアートは本物の障害者で、彼の言葉はほとんど誰にも理解できない。なので字幕もすべて「×××××」表記。なのに女性たちは何故かすべて理解できている。
そして彼は障害者施設に入れられ自由を奪われたことに強く憤慨してて、その怒りを表現したのだと。自分を理解し愛してくれる女性たちを殺してしまう程の怒りとはどれほどなのかと、人間の途方も無い深淵を覗いてしまったような気分になる。

本作を観て最初に気になったのが美術の独特さ。オールセットでの撮影らしく、その作り物感ビンビンののっぺりとした質感が実にキモ美しいんですね。現実にはありえない、別世界の出来事のような印象を与える。

これはアート映画の箱に入れるのがしっくりくる作品ですね。つまり観る人を選ぶ。そして極めてパーソナルな作品でもある。

実はこれに似た映画はすでにあって、それを観ていたせいか衝撃はさほど大きくなかったです。
それは柴田剛監督の『おそいひと』(2004年)で、同じく脳性麻痺の障害者が殺人事件をはたらく話。これも本物の障害者が演じている。
本作の題材に興味を持たれた方は、こちらも観てみると良いでしょう。

ちなみに21:30から始まったこのプログラム、自分は途中で脱落したけど、Q&Aとサイン会まで入れると4時頃までやってたそうです。マジで狂ってる!
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