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映画 夜空はいつでも最高密度の青色だのKKMXのレビュー・感想・評価

4.0
石橋静河つながりで、1年以上前に観た映画の感想文を掲載します。本感想文は鑑賞直後に記しました。


とても綺麗で清々しい、原作者の名前とは正反対に生を高らかに謳った映画だなぁという印象です。意外なくらい正統派。

自殺した母に捨てられた、と思っている美香は「どうせ私は見捨てられる」という観念に支配されており、だからこそ人を求めるけど恐れてしまう。捨てられて保健所に連れて行かれる犬に自分を重ねるくらいだから、まぁ生きづらい。
そんな美香が、夜に一度突っぱねたのに朝まで居てくれた(つまり、自分を見捨てなかった)慎二との出会いで少しずつ安らぎを得る方向に進んでいく姿はなかなかグッときます。

また、東京の描き方ですが、孤独な世界と言うよりも巨大な逃げ場、もしくは避難所に思えました。美香も慎二も東京に逃げてきたのかな、と想像。美香は実家に居場所がなかったし、慎二も訳ありっぽかったし。そんな場所で出会い、互いの存在が居場所になっていくような後半の流れはなんとも優しい。
はじめはギャグだと思っていた東京の歌がだんだんマジになっていく演出には驚きです。サビの「頑張れ〜」が慎二の心とリンクしたり、あのシンガーが最後にメジャーデビューしたり、ベタなくらい熱くて清く正しく真っ直ぐ。

主人公2人の物語は清々しいけれど、周囲の人たちは哀しみがあり、なかなか味わい深いです。
社会から孤立したインテリの隣人や、現場の仲間たちとか。慎二に言い寄った同級生は東京でも居場所がなくNYまで逃げるけど、まぁ逃げきれないだろうな〜なんて思ったりしました。

慎二の背景と変化がもう少し丁寧に描かれていれば、とも思いましたが、語りすぎないくらいがちょうど良かったのかな。美香を好きになった気持ちが虚無に陥っていた彼を変えたのでしょう。
終盤に美香と慎二が自転車で2人乗りするシーンがありますが、何故かとても美しく感じ、心に残っています。


【2018年追記】
石橋静河、ショートカットが似合わない疑惑がありそうです。本作はかなり魅力に乏しいルックスでありますが、『きみの鳥〜』ではなかなか魅力的でした。後ろで縛れる長さは欲しいところです。
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