mimitakoyaki

密偵のmimitakoyakiのレビュー・感想・評価

密偵(2016年製作の映画)
3.9
いやー、韓国映画アツイですよね!
今年観たコクソン、アシュラ、お嬢さん、新感染では韓国映画のクオリティの高さを見せつけた感があり、アクションのすごさや、撮影技術や美術の素晴らしさなどなど驚かされましたが、本作でもそんな韓国映画の良さがたらふく味わえました。

1920年代の大日本帝国が朝鮮を植民地支配していた時代を背景に、日本の支配からの独立を目指して武装する"義烈団"のリーダーと義烈団への潜入を命じられた朝鮮人の警官を描いています。

義烈団は今で言うところの過激派武装組織に当たるのでしょうけども、日本による支配で文化や言語や名前まで奪われた当時の人々からすれば、こういうレジスタンスが生まれるのも当然の事だと思います。

ソン・ガンホ演じるジョンチュルは朝鮮人でありながら日本警察に属し、義烈団のリーダー ウジンを捕らえ組織を壊滅させる任務を負いますが、密偵として義烈団に潜入しウジンらの思いに触れるうちにアイデンティティが揺らいでくる、そんな葛藤を見事にソン・ガンホが演じていてさすがです。

前半は展開する状況を理解するのについていけずわかりにくいところもありましたが、義烈団が上海から京城(現 ソウル)まで列車で爆弾を運ぶあたりから、見つかるのかどうかハラハラして張り詰めるし、誰が警察に義烈団の情報を流しているのかがわからないのでスリリングで目が離せません。
ジョンチョルが警察として動いていたのか義烈団として動いていたのかも終盤までわからずとても面白かったです。

そして、音楽、美術や映像が美麗で、クラシカルな雰囲気がとっても上品でお洒落。
鶴見辰吾演じるヒガシをトップとする総督府警務部や列車の特等席の内装など素晴らしくドラマ以外の部分でも非常に見応えがありました。

大日本帝国に植民地支配され、自由や権利、アイデンティティを侵され、朝鮮人同士も分断された悲しい歴史。
日本ではあまりこの時代の事が知られてないために、この時代を扱った作品に対してすぐに反日とか韓国の愛国プロパガンダとか言って忌み嫌う人もいるようですが、物語がフィクションであってもこういう時代があったことは事実であり、都合の悪い歴史から目を背けてなかったことにしたり、正当化や美化することや、敵国のように嫌悪する風潮は恐ろしさを感じます。
こんな時代があり、その時代に生きた人々の悔しさや悲しみを知っておくことはとても大切なことだと思いました。

この作品、クレジットを見ると日本人や中国人の名前がたくさんあり、一緒に作品を作り上げている事が素晴らしいと思いました。

新感染に続きコン・ユさんは相変わらず素敵だし、特別出演のイ・ビョンホンの放つ色気と存在感はなにごとでしょうか。
ソン・ガンホはもちろんのこと、演技もみなさん素晴らしかったです。

あ、あとハシモトの超高速ビンタも見どころですよ!
吉本新喜劇のドリルすんのかーい!のシバキ棒のようなスピード感と華麗さでした。

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