サラリーマン岡崎

否定と肯定のサラリーマン岡崎のレビュー・感想・評価

否定と肯定(2016年製作の映画)
3.8
映画の中で主人公が室内の天井を見上げるシーンが何度かある。
吹き抜けの階段だったり、シャンデリアだったり、開放的な空間。
これはアウシュビッツのこもった逃げ場のないガス室との対比なのか?

しかし、主人公はこのとき息苦しさを感じている。

イギリスは原告側ではなく被告側が立証をしなければいけない。
そもそも原告であるアーヴィングの目的はホロコーストがなかったことを証明することではなく、被告のリプスタットを批判することで、
社会的にホロコーストがなかった様に見せること。
だから、被告側の弁護団はリプスタットやホロコースト生存者に証言台に立たせない。
アーヴィングの口のうまさで全て丸め込まれてしまうから。

だからこそ、何もできないリプスタットなずっと映る。
すごくもどかしい。
ホロコースト生存者には何で何も言わないのか、なぜ私たちを法廷に出さないのかと責められる。
板挟みや…息苦しい…。
もどかしいけど、それが裁判のプロたちのやり方。
そういう風に様々な観点で見せているところがこの映画の面白いところ。

世の中に当たり前だと思っていたけど、
当たり前じゃないことってあるんだなと突きつけられた。
ホロコーストがあったことなんて当たり前だと思ってた。
けど、徹底的に証拠が消されてるから、
それを証明することは難しいなんて。
そういう視点もそうだし、裁判のやり方、
様々な角度で新しい観点を与えられる映画。

映画がメディアってこういうこと。