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君の名前で僕を呼んでのmiwanのレビュー・感想・評価

君の名前で僕を呼んで(2017年製作の映画)
4.8
表現する術がわからず戸惑う者と、表現を抑えることに葛藤する者。
爆発させるスイッチがわからずもがく者と、スイッチへ延びる手に躊躇う者。
前者はティモシー・シャラメ演じる高校生のエリオであり、後者はアミハマ演じる大学院生オリヴァ。

「君の名前で僕を呼ぶ」ことは、お互いの欲求と抑制の最大公約数であるような気がする。名前を大声で叫ぶことにより自分の隠し切れない気持ちを相手に伝え、自分の名前を口にすることで、糸が切れないよう自分自身に訴える。

北イタリアの避暑地が舞台であるというだけで、甘酸っぱい匂いがする。そして、生い茂る草の青々しい匂いがスクリーンから立ち込めてくる。
素朴で絵画のように素敵な風景は、秘密の場所でいっぱいだ。

「ひと夏」という、これまた喉の奥がキューッとなるような時間の流れのなかで、エリオとオリヴァの感情が交差していく。そして、お互い微妙に変化していく。鼓動はゆったりしているのにドキドキする。

ティモシーくんの青々しさがたまらないし、アミハマの強さと弱さのバランスがたまらない。
エリオのお父さんとお母さんもとっても素敵。

いつもと同じ日常の中で暖炉の火に暖まるエリオは、こちらから見れば雪空に震えるエリオだった。切なくて酸っぱい。
素敵な作品。
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